
オフィスは、一日の大半を過ごす場所です。
オフィス空間に心地よい香りが流れていると、スタッフや訪客の五感を刺激し、生産性や幸福度にポジティブな影響を与えます。
アロマの機能性を効果的に活かした空間デザインを実現するためのポイントを紹介します。
アロマ空間デザインとは
アロマ空間デザインとは、目的やニーズに合わせ、適切な香りを適切なタイミングで適切な濃度で空間に香らせることで、空間をデザインすることです。
単に香りを漂わせるのではなく、「いつ・どこで・どんな香りを・どれくらいの濃度で」といった細かな設計を行い、空間全体に一貫性と目的を持たせるのが特徴です。
この考え方は「セントマーケティング(香りによるマーケティング)」とも呼ばれ、店舗やオフィスの雰囲気を印象づける演出やブランドイメージを引き上げる要素として利用できます。
空間に機能性を持たせる
アロマに含まれる天然の芳香成分には、心身に働きかけるさまざまな効果があります。たとえば、ラベンダーはリラックスや安眠を促す効果があり、レモンやミントはリフレッシュ効果や集中力アップなどの効果があります。
アロマを目的に応じて使い分けることで、空間に「癒し」「活力」「集中」などといった機能を持たせることが可能になります。
五感を連動させる
視覚・聴覚・嗅覚などといった人間の五感は基本的には連動しています。空間の雰囲気やインテリア、BGMと調和したアロマを取り入れることで、視覚や聴覚、嗅覚を連動させることができ、ユーザーの体験価値向上につながります。
オフィスにおけるアロマ空間デザインの効果

オフィスにアロマ空間デザインを導入することで得られる4つの効果を紹介します。
ブランドイメージの向上につながる
企業の受付や応接室などに、企業イメージに合った香りを取り入れることで、訪れたお客様に良い第一印象を与えることができ、企業ブランドの向上に繋がります。
また、香りを覚えてもらうことで、違うどこかで同じ香りを嗅いだ際に企業を思い出してもらうことができるため、アロマ空間デザインは企業イメージの定着にも役立ちます。
健康経営の促進につながる
ストレスマネジメントの一環としてオフィスにアロマを取り入れることで、心身の健康維持に寄与し、働きやすい環境づくりや企業全体の「健康経営」の促進につながります。
気分転換とモチベーション向上につながる
アロマに含まれる天然成分には、リラックス効果やストレス軽減、リフレッシュ効果などがあります。アロマをオフィスで活用することで、気分をリフレッシュさせポジティブな気持ちを高めることができ、従業員のモチベーション向上が期待できます。
業務効率の向上につながる
集中力を高める効果があるとされるアロマを用いることで、作業に集中しやすい空間を作ることができます。集中力を高められることにより、結果的には業務の効率化やミスの軽減にもつながります。
【効果別】オフィスでよく活用されるアロマ

オフィスにおすすめの香りを効果別に紹介します。
集中力・仕事効率アップなら
集中したい時間や、アイデアを練るクリエイティブな時間におすすめの香りです。
ローズマリー
頭をすっきりと冴えさせ、記憶力や集中力を高める効果があるといわれています。長時間のデスクワークにもぴったりです。
レモン
爽やかでフレッシュな香りが脳を刺激し、注意力や判断力をサポートします。会議やプレゼンの前にもおすすめです。
ペパーミント
清涼感のある香りが眠気を吹き飛ばし、気分をシャキッとさせてくれます。午後の集中力が落ちがちな時間帯におすすめです。
ユーカリ
呼吸を深くし、頭をクリアにする効果が期待できます。空気の浄化にも役立ち、クリーンな印象の空間にすることができます。
リラックス・ストレス軽減なら
リラックス効果やストレス軽減効果のあるおすすめの香りです。
ラベンダー
やさしく穏やかなフローラル調の香りが特徴で、リラックス効果の代表格ともいえるアロマです。緊張や不安をやわらげ、心を落ち着かせてくれます。
カモミール
りんごのようなやさしい甘さを感じさせる香りで、安眠・鎮静作用が高いことで知られています。イライラや感情の乱れを抑え、心を穏やかに保ちたいときにぴったりです。
サンダルウッド
深く落ち着いたウッディ系の香りで、精神を安定させ、集中力を持続させる効果があります。香りの持続性も高いのが特徴です。
ベルガモット
爽やかな柑橘系の香りにほのかな甘さが加わったバランスの良い香りで、ストレスを軽減しつつ気分を明るくする効果が期待できます。
気分転換・モチベーション向上なら
気分転換やモチベーション向上を期待できる香りです。
オレンジ
甘くてフレッシュな香りが特徴のオレンジは、気分を明るくしてくれるアロマです。緊張を和らげる効果もあります。
グレープフルーツ
ほろ苦さのある爽快な柑橘の香りで、リフレッシュ効果と脂肪燃焼促進効果が期待されるアロマです。気持ちを切り替えたいときや、脳をすっきりさせたいときにおすすめです。
ティーツリー
シャープで清潔感のある香りが特徴で、空間のリフレッシュと集中力アップに効果的です。抗菌・抗ウイルス作用にも優れているため、衛生面のサポートにもなります。
アロマ空間デザインのオフィス導入事例

アロマ空間デザインを活用できる施設やシーンについて以下の4つの事例を紹介します。
導入事例1.株式会社free web hope様
株式会社free web hope様は、マーケティング領域の課題解決に向けて、コンサルティングや実行支援を行っているマーケティング支援企業です。
この企業のオフィスは受付を設けず、エレベーターを降りるとすぐに開放感のあるレイアウトが広がっており、右手にワークスペース、左手には休憩用のスペースが設置されています。
「集中しやすく、快適な空間づくり」を目的に、ユーカリをベースにした清涼感のある香りを採用。頭脳明晰効果が期待できるアロマを活かし、広めの空間全体にしっかりと香りを広げながらも、自然になじむように演出されています。
導入事例2.株式会社ホットスケープ様
株式会社ホットスケープ様は、イベントの企画・制作・運営をはじめ、コストマネジメントやホールの管理・コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開している企業です。
新たなオフィスは虎ノ門ヒルズにあり、「CURIOSITY × IGNITION」をテーマに、開放感ある空間設計と先進的な音響・配信設備を備えた、創造性と生産性を両立できる空間となっています。
当社のアロマ空間デザインでは、シトラス・ウッド・フローラルをバランスよく組み合わせた香りを採用。洗練された香りにより、居心地の良さと上質な雰囲気を一層引き立てています。
導入事例3.株式会社日本パープル様
株式会社日本パープル様は、高度な情報セキュリティ対策ソリューションを提供する企業です。
エントランスは、洗練されたインテリアが印象的で、居心地の良さを感じられる空間が広がっています。
香りの演出としてフローラル系のジャスミンに、タイムなどのスパイス系をブレンドしたアロマを導入。洗練された高級感のある香りは、来訪者だけでなく社員の皆様からも高く評価されています。
導入事例4.株式会社アップセルテクノロジィーズ様
株式会社アップセルテクノロジィーズ様は「AI×インサイドセールス」という新たなソリューションを提供する企業です。
エントランスには、洗練された家具や小物が雰囲気とマッチしており、まるで高級ホテルのロビーを思わせるような上質な空間が広がっています。
「何度も何度もテスト品を作ってくれて、世界で二つと無い香りが完成した」、「この香りがあることで、お客様がよりリラックスでき、商談もスムーズに進むようになった」
と好評いただいています。
アロマ空間デザインの導入ポイント
アロマの機能性を効果的に活かした空間デザインを実現するための3つのポイントを紹介します。
目的を明確にする
まず一番大事なことは、香りを導入する目的を明確にしておくことです。
香りを導入することで空間をどうしたいのか、それをはっきりさせると、それぞれのスペースの機能や用途に合った香りの選定がスムーズにできます。
集中力アップを期待させたいという目的なら

「頭脳明晰効果」
例えば、集中力アップを期待させたいという目的なら、ローズマリーやペパーミント、レモンのような、頭脳明晰効果の高いエッセンシャルオイルがおすすめです。実際に、レモンを香らせた場合に、仕事のミス率が半分に減ったというデータがあります。
「ミス率の減少」
他にも小学生高学年を対象とした計算ミス率を集計すると、ペパーミント油を嗅いだ時は23.8%、オレンジ・スイーツ油を嗅いだ時は27.3%減少したという実験データもあります。(引用元:『小学生の計算力と気分に与える精油の影響』熊谷千津、永山香織)
ブランドイメージを向上させるという目的なら

「視覚と嗅覚の連動」
一方、ブランドイメージを向上させるという目的であれば、オフィスのインテリアやカラーなどの要素に合わせて、雰囲気と調和する香りを選ぶことも重要です。
香りは嗅覚に訴える感覚ですが、インテリアとの連動により視覚と嗅覚が連動し、より効果的な空間演出が可能となります。例えば、木材を使用した家具や自然素材のデザインの空間の場合、ウッディな香りを演出することで、視覚と嗅覚の両面から自然な雰囲気を創り出せます。
「ブランドイメージの表現」
インテリアとアロマの組み合わせは、企業やブランドのイメージを表現する重要な要素となります。
例えば、自然や健康を重視する企業のオフィスでは、自然素材のインテリアやグリーンを効果的に使っていることでしょう。そういったオフィス空間には、健康的なイメージのスイートオレンジや、前向きな気持ちにさせるベルガモットなどの相乗効果の高い香りを取り入れることで、そのブランドの理念や価値観を五感で体現することができます。
このように目的をしっかり定めることで、香りが空間と相乗効果を高め、空間の機能性や雰囲気をより一層引き立たせることができます。
配置場所を考慮する

次にオフィスのアロマ空間デザインをする上で重要なことは配置場所です。
エントランスや共有スペースなど、従業員や訪客が集まる場所に設置するのがベターです。
従業員さんの席に近いところに置いてしまうと、香りが滞留しやすくなるため注意が必要です。
最適な香りの配置計画を行うことで、おだやかに香りが拡散し、無意識下でも心地よさを感じる空間演出が可能になります。
設置場所は、壁掛けが一番ベストです。床に置くよりも香りの拡散が拡散しやすいですし、何より足元が邪魔になりません。ウェルネスコンサルティング株式会社ではこういった壁掛けタイプの施工もお勧めしています。
エントランスなら

エントランスでは、お出迎えやおもてなしの心を香りで表現することを心がけましょう。
エントランスは、来訪者を意識した空間でもありますので、視覚と嗅覚の両方を活用した効果的な演出が重要です。
エントランスのインテリアやディスプレイと調和した香りを選択し、一体感のある空間を作り出しましょう。
「アーティスティックなオフィス」
カラフルな家具やユニークなデザイン、アート作品やグラフィックを飾っているような、アーティスティックな空間。クリエイティブな仕事を行う業種でよくお見かけします。
創造性や表現性を意識されているかと思いますので、香りも創造力を刺激するものを。
シトラスやフルーティーな香り(例: オレンジ、ベリー)や、エキゾチックな香り(例:パチュリ、イランイラン)などで刺激的で活気ある雰囲気を演出するとよいでしょう。
「モダンなオフィス」
明るい色調でシンプルな家具やデザインを使用している空間。
コンサルティングやITなどの業種でよくお見かけします。
こういったシンプルなインテリアでまとめられた空間には、明るさと清潔感を感じさせる、シトラス系の香り(例:レモン、グレープフルーツ)やフレッシュなグリーンノート(例:ミント、ユーカリ)で演出するとよいでしょう。
共有スペースなら

共有スペースでは、気分転換できる香りがベターです。
香りによる刺激で、スタッフの仕事モードへの切り替えにも効果を発揮します。
「リラックス・休憩スペース」
用途としては、ストレス解消やリフレッシュ、リラックスを目的としたスペースですので、ラベンダーやカモミールのようなリラックス効果のある香りが適しています。
「応接・来客スペース」
用途としては、来客やビジネスミーティングが行われるスペースですので、ベルガモットやローズウッドのような上品で落ち着いた香りが会話を後押ししてくれます。
香りを変えて季節感を演出する

毎日同じ人が通勤する場所だからこそ、香りを変えることで季節感を出したり、寒暖差に対して少しでも体が楽に感じる空間にできることも、オフィスにおけるアロマ空間デザインのメリットの一つです。
室内にいながらも、香りで四季を楽しむ遊びゴコロをオフィスに取り入れてみると、五感が豊かになるとともに、思いがけないアイディアが浮かぶ刺激になるかもしれません。
夏のアロマ空間デザイン

夏のような湿気を帯びる季節には、清涼感のある香りを選ぶことでクールダウン効果を狙うこともできます。
ミントの香りを嗅ぐだけでも、人は涼しさを感じます。
「体感温度が4℃下がる」
例えば、ペパーミントの香りを嗅ぐことで4℃も体感温度が下がるという実験結果が出ています。
(出典:「香りが感覚/使用感触の判断に及ぼす効果」(株)資生堂製品開発センター香料開発室 庄司 健 ※発表当時)フレグランスジャーナル社 AROMA RESEARCH No.23(2005)
クールビズという言葉は当たり前になりすぎてもう古いでしょうか。
けれど単にエアコンの温度で実際の温度を下げるだけでなく、こういった香りの力も利用してみると、消臭効果も相まって、涼やかな香りで快適な空間にすることができます。
冬のアロマ空間デザイン

寒さを和らげるために温かみを感じる香りを選ぶとよいでしょう。
例えばスイートオレンジは温かみと明るさをもたらしますし、暖房との相性も良い香りです。
「寒暖差による不調がアロマで和らいだ」
尚、寒暖差による不調が和らいだアロマTOP3は、ラベンダー、スイートオレンジ、ゼラニウム。
アロマを使用した結果は、ラベンダーでは84%の方が「気持ちが楽になったように感じた」、62%の方が「症状が緩和されたように感じた」、スイートオレンジではそれぞれ59.6%、43.6%、ゼラニウムではそれぞれ56.0%、42.4%となっています。
(出典:2022年AEAJ調べ、複数回答、n=778)
オフィス空間を香らせるには、香りを感じる場所を考慮した配置計画から、香りを導入することで得たい成果をはっきりとさせるといった、アロマ空間デザインの全体計画がとても大切です。
精油を用いたオフィスにおけるQOL向上の実例
ウェルネスコンサルティング株式会社が行ったアンケートでも、オフィスに香りを導入した感想として
- 入室時に気分がいい
- 切り替えのスイッチが入る
- 謙虚な気持ちになる
- お客様へのおもてなしの心を強く意識するようになった。
- 印象が変わった。オフィスのグレード感の演出にもつながっていると思う。
- 気分転換になりフレッシュな気持ちで仕事へ取り組めます
- 加齢臭がしなくなって帰ってきたときに気分が良い。
- 本社に行くと、毎回深呼吸しています。気持ちが良い意味でリセットされる感覚です。
といったものが聞かれ、こちらは、「アロマによる空間価値向上の実例~精油を用いたオフィスにおけるQOL向上の実例~」として、2014年9月21日の早稲田大学における「現代QOL学会第2回学術大会」においても紹介させていただきました。
毎日長い時間を過ごすオフィス空間だからこそ、社員のモチベーションアップ、快適さアップが実現できる香り空間を是非取り入れてみましょう。
まとめ
アロマ空間デザインを導入することで、ブランドイメージの向上や健康経営の促進、業務の効率化など様々な効果を期待できます。
香りによってそれぞれ期待できる効果が異なるため、より効果的で好印象な空間づくりを行うには導入目的にあった香りを選ぶことが重要です。