精油の抽出方法について解説

精油(エッセンシャルオイル)の抽出方法は、水蒸気蒸留法、圧搾法、油脂吸着法などの種類があり、それぞれ特徴があります。

それぞれの抽出方法に長所と短所があり、植物の種類や使用目的によって選ばれます。

今回は、精油の抽出方法について詳しく解説した後に、自宅で精油を抽出する方法についても併せて解説します。

目次

精油の抽出方法の基本知識

精油の抽出方法の前に、まずは精油の基本情報について解説します。

精油とは

精油(エッセンシャルオイル)とは、植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂などから抽出される天然の素材です。有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質で、各植物によって特有の香りと機能を持ちます。

精油は、その植物が持つ性質によって、さまざまな方法で抽出することができます。

関連:精油(エッセンシャルオイル)の使用方法

精油の抽出方法の種類

精油の抽出方法には、次の種類があります。

  • 水蒸気蒸留法
  • 圧搾法
  • 油脂吸着法(アンフルラージュ法)
  • 油脂吸着法(マセレーション法)
  • 溶媒抽出
  • CO2蒸留法

次の章から、それぞれについて解説していきます。

水蒸気蒸留法の特徴とメリット

水蒸気蒸留法

水蒸気蒸留法は、最も一般的で効率的な抽出方法です。歴史も古く、発明されてから5000年にもなります。上記写真は、ブルガリアのカザンラクにある古来の蒸留水装置です。当時は今のように電気やガラスがないので、直接火にかけて、樽にその芳香成分を溜めています。

水蒸気蒸留法とは、ハーブなどの葉や花などの原料を蒸留釜に入れ、下の熱湯から出る蒸気を蒸留釜に送り込む方法です。植物のなかにある精油になる成分が水蒸気になって上昇し、じっくり時間をかけて抽出します。
抽出された液体は、水溶性と油溶性に分離されます。油溶性の芳香成分は上部に浮き、精油として利用できますが、水溶性の芳香成分は芳香蒸留水(フローラルウォーター)として利用できます。

ローズやミント、ラベンダーなどでよく利用されます。

水蒸気蒸留法は、従来の蒸留と比べて低い温度で実施でき、分解点より低い温度で成分が混合物から分離できることがメリットです。

一方で、原料植物が熱と水に晒されるため、デリケートな成分を含む精油は熱と水に反応して壊れてしまうため利用できません。

圧搾法の特徴とメリット

圧搾法

アロマの圧搾法は、熱を加えず機械で果皮を絞って精油を抽出する方法です。水蒸気蒸留法と異なり、熱による影響を受けないため、デリケートな成分を損なうことなく新鮮な香り成分を取り出すことができます。

レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ベルガモットなどシトラス系の精油に向いている抽出方法です。

果皮由来の色素も同時に抽出されるので、精油自体も果皮の自然な色を呈するのも特徴です。

一方で、搾カスなどの不純物が混入しやすいため、他の方法で抽出した精油より酸化して劣化しやすいデメリットがあります。空間デザインの観点で言うと、圧縮空気を送りだすタイプの機械等では、細い管に搾りカスが詰まりやすいため、気を付けなければなりません。

アンフルラージュ法の特徴とメリット

アンフルラージュ法

アンフルラージュ法は、油脂吸着法の一種で、花から香気成分を抽出する方法です。エジプト時代から使われている方法です。上記写真は、フランスグラースにある、ガリマールの資料館にある、ジャスミンのアンフルラージュの様子です。

シャーシと呼ばれるガラス板に動物性の脂を塗り、その上に原料植物を並べて香り成分を抽出します。化学物質(ポマード)をアルコールに溶かし、液体を加熱してアルコールを蒸発させることで、水溶性の精油だけが抽出させます。

室温で抽出できるため、熱に弱い成分も抽出することができるのがメリットです。

アンフルラージュ法 写真2

ジャスミンやチューベローズ(月下香)など、摘みとった後も香りを失わない花から香気成分を抽出するために使われています。

手間のかかる抽出法であるため、他の精油に比べて高価になりがちです。

マセレーション法の特徴とメリット

マセレーション法

マセレーション法は、花や葉を押し潰して油腺や細胞を破裂させ、60℃〜70℃の温かい植物油やラードに入れる抽出方法です。

アンフルラージュ法に似ており、自宅でエッセンシャルオイルを希釈された状態で作ることができます。

溶媒抽出の特徴とメリット

溶媒抽出


溶媒抽出法とは、芳香植物を揮発性の有機溶剤に入れて香り成分を溶かし出す抽出方法です。
水蒸気蒸留法と比べてより多くの芳香成分が抽出でき、高濃度の原料液を大量に処理できるため、連続生産が可能です。

ローズやジャスミンなど繊細な花の香りの抽出に多く用いられます。しかし、使用した有機溶剤が完全に除去されずに残留していることがあり、スキンケアとして使用する際には注意が必要になることもあります。

溶媒抽出 ジャスミン


こちらはフランスのグラースの工場で作られているジャスミンのコンクリートです。CHANELの香水に使われるものです。

溶媒抽出法では、植物を石油エーテルが入った釜の中に入れ、熱して香りを吸着させます。この液体を蒸発させると石油エーテルは固体化し、そのコンクリートをアルコールで処理するとアブソリュートと呼ばれます。

溶媒抽出 シャネル

CO2蒸留法の特徴とメリット

CO2蒸留法

CO2蒸留法は、高圧下で二酸化炭素(CO2)を使用した抽出方法です。過去数十年前に開発された比較的新しい方法です。

CO2は不活性で、の臨界点が約31℃、72.9気圧と比較的低いため、熱に弱い植物の成分や機能を損なうことなく抽出されます。

また、使用するのは二酸化炭素のみで化学溶剤を使用しないため、安全でベビーや高齢者、病人へのケアにも活用できます。

CO2蒸留法 イメージ

水蒸気蒸留による抽出方法だと、分子が大きすぎて取り出せない成分でも取り出せるため、幅広く活用できる方法です。

自宅でできる精油抽出

自宅の精油抽出 キット
蒸留

自宅で精油(エッセンシャルオイル)を抽出するには、水蒸気蒸留法がおすすめです。
上記写真は最大で3kgの植物が入る大型の蒸留器ですが、もっと小さいものでも手軽に作ることができます。

ただし、取れる精油の量はほんのわずかです。収油率は、植物の状態にもよるので、一概に定義できませんが、当社の実験データによると、ラバンジンやイングリッシュラベンダーは2~3%(1000gの植物から20~30g)、新生ラベンダーで0.5~1%、柚子等の柑橘で0.5%、ローズマリーやミント類はそれ以下、となっています。

必要な道具と材料

自宅の精油抽出 必要な道具と材料
  • 蒸留器
  • ビーカー
  • 植物
  • IHヒーター

こちらの写真くらいの大きさですと、植物がだいぶ少なくなりますので、精油はなかなかとれにくいかもしれません。
でも蒸留水は取れますので、ご自宅で、お掃除に使ったりお風呂に入れたり加湿器に入れたりして、楽しむことができます。

水蒸気蒸留法で蒸留水を作るには、次の手順に従います。

  1. 大きめのステンレス製の深型鍋に水道水を入れる
  2. 鍋の中にガラスボウルを浮かべる
  3. 鍋の上に蓋を裏向きにのせる
  4. 蓋の上に氷をのせ、火にかけたら鍋の中のお水を沸騰させる
  5. 蓋についた水滴がガラスボウルの中に溜まっていく
  6. 必要量が取れたら、別の保存容器に移し替えて完成

芳香蒸留水はこれまでは精油を採る工程での副産物とされてきましたが、役立つものとしてその活用方法が近年再認識されています。

例えばクリニックで空気洗浄対策としてティートリーウォーターを使ったり、病室で使っても香りがきつくないので他の人にも迷惑をかけず、また退院まで風邪もひかずに治療に専念できたという報告もあります。

災害時に避難所での感染症予防のためラベンダーウォーターを使ったという例もあります。

まとめ

今回は、精油の抽出方法について解説しました。抽出方法には、次の種類があります。

  • 水蒸気蒸留法
  • 圧搾法
  • 油脂吸着法(アンフルラージュ法)
  • 油脂吸着法(マセレーション法)
  • 溶媒抽出
  • CO2蒸留法

AOI’S AROMAでは、ブランドのイメージやインテリアに合わせた、五感と感性に訴えかける印象に残る空間の演出だけでなく、消臭、殺菌、精神活性化などの、天然エッセンシャルオイルならではの効能を生かした空間演出を行います。

国際アロマセラピスト資格を持ったアロマのプロによるサポートをご希望の方は、まずはお気軽にお問合せください。ご要望をお伺いして、最適な空間デザインをご提案いたします。

本記事の監修者

ウェルネスコンサルティング株式会社
代表取締役 葵 智恵子

葵 智恵子
葵 智恵子 保有資格

ホテル、車ショールーム、クリニックをはじめ全国200ヶ所以上で香り空間デザインを実施

アロマの資格として、英国IFA認定国際アロマセラピストという、英国では看護師と同等の医療従事者として扱われる資格を取得。アロマ検定本『アロマ物語』監修。

アロマ空間デザイナー養成のためのアロマ空間デザインスクールを経営しており、全国から法人・個人の受講者が集まっている。

【保有資格】

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