香りによるマーケティング、セントマーケティング(Scent Marketing)は、商品やサービスを販売する際に香りを活用するマーケティング手法です。
香りは嗅覚を通じて脳に直接働きかけるため、感情や記憶を呼び起こす力(プルースト効果)があります。
また、香りは消費者に深い印象を残すので、ブランドのアイデンティティを強化し、顧客の購買意欲を高めることができます。
香りマーケティングは、店舗やホテル、オフィスなどさまざまな場面で活用されており、効果的な販促手段として注目されているので、その効果とメリットについてご紹介します。
香りマーケティングとは?

香りマーケティングは、顧客の五感の中でも特に感情や記憶に強く作用する嗅覚を活用したマーケティング手法です。
ブランドイメージと一致する香りを選ぶことで、顧客に統一感のあるブランド体験を提供できます。
特にアロマ空間デザインは、香りを最大限に生かし、心地よい職場や空間を作り出す手法として注目されています。
独自の香りを使うことでブランドの差別化を図り、顧客体験を向上させ、購買意欲を刺激することができます。
この手法は多くの業界で活用されており、顧客の記憶に残るブランドづくりに役立っています。
下記のグラフは、五感が記憶や感情に直接作用する重要度を表したものです。

嗅覚の記憶が感情に直接作用する重要度は45%で、視覚の58%に次いで高い数字となっており、嗅覚が経営戦略においてとても重要なことがわかります。
香りマーケティングを取り入れた代表的な例は、下記のとおりです。
- トヨタ自動車
- すみだ水族館
- ANA
- ウェスティンホテル
- Abercrombie & Fitch(アバクロ)
このように、取り入れている企業は香りによる差別化でファンを獲得するのに成功しています。
一方で、経営戦略として「嗅覚」を取り入れている企業はまだまだ少ないのが現状なので、差別化の効果は大いに期待できます。
香りマーケティングにおいて使用されるアロマには、天然のこともあれば合成の場合もあります。
天然香料には、ストレス軽減作用や集中力アップ作用、制菌作用などがあり、場面ごとに使い分けることでより高い効果を発揮します。
合成香料には、天然香料には出せない奥深さや深みを表現できるという強みもあります。
天然香料と合成香料はそれぞれ特徴が異なるので、それらを踏まえたうえで上手く活用しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

プルースト効果
プルースト効果とは、特定の香りが記憶を呼び起こす現象のことです。
これは、嗅覚が大脳辺縁系や海馬と密接に関係しているために起こります。
香りの情報は鼻から脳の嗅球を経由して大脳辺縁系に直接届きます。大脳辺縁系は感情や記憶を司り、その一部である海馬は特に長期記憶の形成に重要です。
このため、特定の香りを嗅ぐと、過去の記憶や感情が鮮明によみがえることがあります。
香りは他の感覚よりも強力に記憶と結びついているため、瞬時に過去の体験を思い出させる力があります。
例えば、クッキーの焼ける香りを嗅ぐと、子どもの頃に祖母が焼いてくれたクッキーを思い出す、というのが、プルースト効果です。
店舗や商品に特定の香りを結びつけることで、顧客の記憶に残りやすくなり、ブランドイメージの向上や購買意欲の向上につながります。

この効果をビジネスに活かす手法として、香りマーケティングが注目されています。
ブランドアロマの役割
上記のプルースト効果を効果的に活用したものが、ブランドを象徴する独自の香りであるブランドアロマです。
ブランドアロマは効果的な導入をすることで、企業ブランディングの一環として企業のイメージを強化する重要な手段の一つになります。
企業ブランディングには、ロゴやコーポレートカラーといった視覚的な要素が含まれますが、香りもその重要な要素の一つなのは間違いありません。
たとえば、有名なコーヒーチェーン店の独自のコーヒーの香りや、高級ホテルの特有のアロマは、顧客にそのブランドを思い出させ、特別な体験を提供することでブランドの価値を高めています。
香りが企業のイメージを強化する理由は、香りが感情や記憶と深く結びついているためです。
ブランドの特定の香りを嗅ぐことで、ブランドに関連付けられたポジティブな体験や感情を思い出すことができます。
これにより、顧客のブランドへの愛着やロイヤリティが向上し、ブランドの競争力が高まります。
ブランド戦略として使う独自の香りを、単にブランドアロマと呼ぶ以外に、オリジナルアロマやブランドセントと表現されることもあります。
香りマーケティングの3つの効果

香りマーケティングには、下記の3つの効果があります。
- ブランド強化の効果
- 顧客満足度向上の効果
- 購買意欲刺激の効果
それぞれについて解説します。
ブランド強化の効果
香りの力を活用し、ブランディングや購買意欲の向上などに貢献します。
例えば、ナチュラルでオーガニックな製品を扱うブランドが、ラベンダーやローズマリーなどの自然な香りを使用することで、そのナチュラルさがさらに強調されます。
これにより、顧客の中でイメージに一貫性が生まれ、信頼感が増します。
有名企業や一流企業では、香りを空間デザインに取り入れた事例が増えており、アパレル、ホテル、航空業界など、ホスピタリティを重んじる業界で多く見られます。
さらに現代のライフスタイルに合致した手法として、近年はオフィスでも採用が増えています。
ブランドの識別性を高める場合には、下記のような香りがあります。
- シトラス系(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)
- 効果: 爽やかでエネルギッシュな印象を与え、明るくポジティブに演出します。
- 使用例: コスメティックブランドや健康食品の店舗で使用されることが多いです。
- ラベンダー
- 効果: 誰にでも親しまれる香りで、安心感と信頼感を提供します。
- 使用例: スパや美容サロンなどリラックスを重視する場合に適しています。
- ペパーミント
- 効果: 清涼感があり、集中力を高める効果があります。
- 使用例: ヘルスケアブランドやフィットネス施設で使われることが多いです。
顧客満足度向上の効果
空間を香りでデザインすることで、ストレスの緩和や不快感を心地よいものに変えたりやわらげたりすることが可能です。また、非現実世界の演出ができます。
例えば、下記のような場面で活用されています。
- 携帯ショップなどの長い待ち時間のあるところで、香りがあることでリラックスできる
- クリニックにおける薬剤のにおいや美容院における薬剤のにおいが、香りで緩和される
- 下水のにおいがする店舗が、アロマによって消臭されて不快な思いをしなくなった
- 高級クラブで、高級感のある香りを演出することで、非現実的な世界に没頭できる
よくエレベーターホールに鏡があるのは、待ってる間イライラするのを少しでも和らげるためと言われていますが、それと同様に香りもストレスを軽減させるために使われています。
また一度ポジティブな体験をした顧客は、その香りを嗅ぐたびにその体験を思い出します。
繰り返しこの体験をすることでその店舗や企業への愛着が深まり、ブランドのリピーターやファンを増やすことができます。
- ラベンダー
- 効果: リラックスとストレス軽減効果が高く、顧客に落ち着いた環境を提供します。
- 適用例: スパ、ホテル、リラックススペース。
- ベルガモット
- 効果: ストレス軽減と幸福感の向上に効果的です。
- 適用例: カフェ、レストラン、リラクゼーションルーム。
- バニラ
- 効果: 温かみがあり、安心感を与える香りです。
- 適用例: ベッドルーム、アパレルショップ、リビングスペース。
- シトラス系(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)
- 効果: 明るくエネルギッシュな印象を与え、気分を高揚させます。
- 適用例: アクティブな店舗、フィットネスジム、健康食品ショップ。
- ローズ
- 効果: 気持ちを落ち着かせ、ロマンティックな雰囲気を作り出します。
- 適用例: ブティック、ジュエリーショップ、レストラン。
- サンダルウッド
- 効果: 深いリラックス効果と高級感を提供します。
- 適用例: 高級ホテル、ヨガスタジオ、ラグジュアリーショップ。
- パチュリ
- 効果: エキゾチックでユニークな香りがブランドの個性を強調します。
- 適用例: 高級ブティック、アートギャラリー。
- シダーウッド
- 効果: ウッディで温かみのある香りが安定感と高級感を提供します。
- 適用例: 高級家具店、メンズアパレルショップ。
購買意欲刺激の効果
購買意欲を刺激するためには、香りの選択が重要です。
顧客が心地よい香りを感じることで、滞在時間が延びて、購買意欲が高まるという研究結果もあります。
分析によって香りなしに比べ香りがあると購入点数 PI 値が伸びる商品カテゴリーがあること,香りごとにPI値がのびる商品カテゴリーに共通性があることが明らかになった。
引用元:「店舗と商品に与える香りの影響」『経済研究』(明治学院大学)第 142 号より抜粋
(中略)
香りによって店舗評価が高まれば滞店時間が長くなり,非計画購買も促進されるという先行研究を裏付ける結果を得ることができた。
ターゲットとする顧客層が好む香りを選ぶことも効果的です。
顧客の好みに合わせた香りを選ぶことで、より多くの顧客に親しまれ、購買意欲を高めることができます。
- シトラス系(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)
- 効果: シトラス系の香りは、気分を明るくし、エネルギッシュな気分にさせる効果があります。これにより、顧客はポジティブな気分で買い物を楽しむことができます。
- 適用例: 食品店、ファッション店舗、スポーツ用品店。
- バニラ
- 効果: バニラの香りは、安心感と幸福感を与えるため、顧客がリラックスした状態で買い物を楽しむことができます。また、甘い香りが食欲を刺激し、飲食店やカフェでの利用にも適しています。
- 適用例: ベーカリー、カフェ、ブティック。
- シナモン
- 効果: シナモンの香りは、暖かく心地よい印象を与え、特に秋冬の季節に適しています。購買意欲を高め、顧客に親しみやすさを感じさせます。
- 適用例: ホームデコレーションショップ、シーズナルイベント。
- ペパーミント
- 効果: ペパーミントの香りは、爽快感と集中力を高める効果があります。ショッピング環境をリフレッシュし、顧客が集中して買い物を楽しめるようにします。
- 適用例: エレクトロニクスストア、書店、フィットネスセンター。
- ラベンダー
- 効果: ラベンダーはリラックス効果がありますが、適度に使用することで、顧客がストレスなく快適に買い物を楽しめる環境を作り出します。
- 適用例: スパ、ビューティーショップ、アパレルストア。
- ローズマリー
- 効果: ローズマリーの香りは、集中力を高め、心を落ち着ける効果があります。顧客が落ち着いて商品を選べる環境を提供します。
- 適用例: 書店、ギフトショップ、インテリアショップ。
さらに、季節に応じて香りを変えることで、顧客の興味を引き続けることができ、常に新鮮で魅力的なショッピング体験を提供できます。

香りが意思決定や消費行動に大きな影響を与えるということは、研究で明らかになっています。
その空間にあった香りがある時は、香りが無い時に比べて、商品の閲覧時間が長くなるというデータも出ています。
香りマーケティング導入の流れ
香りマーケティングを導入する場合、下記のような流れになります。
- ブランドイメージに合わせた香りを店頭で演出する。
- 香りを繰り返し使用し、ブランドイメージとして定着させる。
- お客さまが家でも香りを楽しめるよう、店頭で用いた香りを使ったグッズを商品化して販売。
- ブランドの香りとブランドイメージが固定化し、リピート率も増える。
- ブランドイメージをもつ香りをアロマ商品として楽しむお客さまを通じ、店頭以外の場所でのブランドイメージが広がり、新規顧客の獲得の可能性が高まる。
- SNSなどを使った拡散により、さらにブランドイメージを展開する。
- 商品化したブランドの香りを身につけた顧客を通じて、今までブランドのことを知らない顧客に広がり、さらなる売上につなげる。
実際に香りを使ったマーケティングを取り入れたいと考えた場合、専門家によるアドバイスを受けるとよいでしょう。
当社でも、お客様から、「自分たちで導入してみたものの、香りをうまく拡散できない、思った効果が得られない」といったご相談が多く寄せられています。
香りの拡散方法や機器の選定、設置に関しても、香りの科学や心理学に深い知識を持っている専門家のサポートを受けることをお勧めします。
まとめ
香りによるマーケティングには、以下の効果があります。
- ブランド強化の効果
- 顧客満足度向上の効果
- 購買意欲刺激の効果
香りは認知心理学とも深い関係があります。
嗅覚は感情や記憶と密接に関係しているため、香りは消費者に深い印象を残し、ブランドのアイデンティティを強化する一助となるでしょう。
PRの一つの手段として、香りマーケティングをうまく活用し、愛されるお店作りを目指しましょう。


