アロマには、心身ともにリフレッシュさせてくれる効果や、認知症予防やストレス緩和、衛生管理の補助といった施設全体の運営にプラスになる効果があります。
そのため、介護施設にアロマを設置することで「介護施設を明るい雰囲気のリラックスできる空間にしたい」「認知症予防やストレス緩和のためアロマの活用方法を知りたい」といった希望を叶えることが可能です。
またスタッフの労働環境改善もでき、他の介護施設との総合的な差別化が図れるため、アロマを導入する施設が増えています。
この記事では、介護施設にアロマを導入するメリットと、おすすめのアロマの使い方や香りをご紹介します。

アロマによる空間演出のような、香りを使った「セントマーケティング」が近年注目されています。
そもそもアロマとは

アロマとは、「芳香」を意味し、安らぎや心地よさを与えてくれる香りのことを指します。
香りを嗅ぐことで脳へと刺激が伝わり、気分を和らげたり整えたりする作用があります。この香りの力を活用し、心や体のバランスをサポートする方法を「アロマテラピー(芳香療法)」と呼びます。
アロマセラピーの基本
アロマセラピーは、植物から抽出されたエッセンシャルオイル(精油)を用いて、心身の健康維持や改善を目指す自然療法の一つです。香りを吸い込むことでリラックス感を得られるほか、マッサージに取り入れると血行を促進し、心身の緊張をやわらげる効果が期待できます。
アロマの作用メカニズム
精油の香り成分は、鼻を通じて嗅覚から脳の「大脳辺縁系」に届きます。大脳辺縁系は感情や記憶、自律神経の働きに深く関わる部分であるため、香りによってリラックスやストレス緩和、集中力の向上などが期待できます。
さらに、精油を希釈して肌に塗布すると、血流の改善や筋肉のこわばりを和らげるといった効果もあります。
介護施設にアロマを導入するメリット

介護施設にアロマを導入することで、以下のようなメリットがあります。
- 認知症予防につながる
- 抗菌作用がある
- 防カビ作用がある
- 利用者の快適さが向上する
- 施設のイメージアップにつながる
- スタッフのストレスが軽減し作業効率が向上する
- 独自のサービスとして差別化できる
香りは科学的に効果が認められており、近年ではその効果を取り入れた香りマーケティングという言葉が知られるようになってきました。
アロマ空間デザインは、科学的な裏付けに基づいた有効なアプローチであり、今後の介護や高齢者ケアの現場でますます需要が高まることが予想されます。
香りマーケティングの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

認知症予防につながる
アロマを導入することは、単に香りを提供するだけでなく、認知症予防という実用的な側面でも非常に効果的です。
香りは五感の中でも強力な記憶の引き金となります。認知症予防の観点からは、香りによる適度な刺激が脳を活性化させ、日常の生活にメリハリを持たせることが重要です。
アロマオイルの香りが、嗅神経の活性化に良いことがわかってきました。香りが嗅覚を通して脳に伝わると、自律神経が整って心身がリラックスするだけでなく、記憶の改善、意欲が出てくるなどの効果が見られたのです。
引用元:『香りの力で認知症予防』 浦上克哉
また、鳥取大学医学部の研究によると、アルツハイマー病の軽度から中等度の患者に対して、アロマオイルの使用により認知機能の改善が見られたという報告があります。
この研究では、シソ科植物の精油が記憶や学習に関わる脳の辺縁系を刺激し、認知機能を向上させる効果があることが確認されました。
(引用元:『認知症への正しい理解と効果的な予防』鳥取大学医学部 教授 浦上克哉氏)
研究によると、ローズマリーやラベンダーなどの精油は、集中力を高める効果があり、認知症の予防や進行を遅らせることが期待されます。
昼間はローズマリーカンファーとレモン、夜は真正ラベンダーとスイートオレンジのブレンドが認知症予防におすすめ。
ただしこれらの効果を期待するには、合成香料ではない天然原料100%のアロマオイルであることが必要です。天然の精油だからできることについての詳細は、下記の記事をご覧ください。

以上より、施設内での香りの導入は、利用者の精神的な安定やリラックスを促し、結果として認知機能の維持や改善につながると考えられます。
抗菌作用がある
介護施設は多くの利用者や職員が出入りする場所であるため、感染症の拡大を防ぐ取り組みが欠かせません。その対策の一つとして、アロマを活用する方法があります。精油の中には抗菌・抗ウイルス作用を持つ種類があり、特に柑橘系やミント系の香りは除菌や抗ウイルス効果に加えて、消臭や防カビにも役立つとされています。
代表的なものとしては、ペパーミント、ローズウッド、ユーカリ、ティーツリーなどが挙げられます。これらは靴箱やトイレのにおい対策にも利用されることがあり、清潔で快適な空間づくりに効果的です。さらに、アロマスプレーをタオルに吹きかけると簡易的な除菌にもつながるため、日常的に取り入れやすい方法といえるでしょう。
防カビ作用がある
アロマには防カビ作用があるものもあり、カビ予防・対策にも効果的です。レモングラスやユーカリ、ティートリーなどの抗真菌作用のあるアロマがおすすめです。
特に梅雨時期など湿気が高い季節は、施設のカビ対策として活用できるでしょう。
利用者の快適さが向上する
アロマはリラックス効果や精神的な安定をもたらす効果を期待できるため、利用者の快適さを大幅に向上させることができます。
特に、介護施設における香りの導入が、利用者の心理的な安定とリラックスに寄与し、さらに行動障害の軽減にもつながったとされており、注目を集めています。
日本アロマ環境協会(AEAJ)の調査によると、オレンジ・スイート精油は深い眠りを促進し、夜間の覚醒が減少したという報告があります。また、目覚め後の活力を高める効果が確認されています。
以下は、老人介護施設に入居中で、過去に興奮行動が見られた認知症の高齢者の方に対してラベンダー、メリッサ(レモンバーム)を用いて行った研究結果です。
ラベンダー精油をアロマシールで芳香した場合において、認知症を発症している高齢者にはメリッサ精油よりラベンダー精油のほうが興奮行動の一部を低減する傾向が示唆されました。
引用元:『精油が認知症高齢者の興奮行動に与える影響』Karen Watson, et al.(2019)
このように、研究ではアロマによって高齢者の不安感やストレスを軽減する効果があることが示されています。
スタッフのストレスが軽減し作業効率が向上する

介護現場は高いストレスが伴うため、アロマテラピーによるリラックス効果はスタッフにとっても有益です。
アロマはストレスを軽減し、気分転換にもなり、スタッフのモチベーションや集中力を高めます。
また、心地よい香りが職場全体の雰囲気を明るくし、チームの士気を向上させる効果もあります。
結果として、従業員満足度が上がり、業務の効率化や離職率の低下にもつながります。

施設全体の雰囲気も明るくなり、利用者だけでなくスタッフにとっても快適な環境が作られます。
施設のイメージアップにつながる
アロマを導入することは、訪問者に対しても心地よい空間を提供し、好印象を与える効果があります。
例えばエントランスは施設の第一印象を大きく左右しますが、心地よい香りによって快適で清潔感のある空間を演出すると、施設に入った瞬間、訪問者にポジティブな印象を与えます。
香りの効果によって施設全体の雰囲気が向上し、訪問者の心に残る体験を提供できます。
独自のサービスとして差別化できる
他の介護施設との差別化を図るための一つの手段として、アロマ空間デザインを導入することは有効です。
香りを活用した空間デザインは、単なる清潔感の提供に留まらず、これまでご紹介してきたような特別な体験を利用者や来訪者、そしてスタッフに提供します。
このようなサービスを導入することで、他の施設では得られない印象的な環境を作り上げ、訪問者に「ここだからこそ」と思わせる魅力を持たせることができます。

施設の独自性を強調し、競合他社との差別化が可能なため、施設のブランド価値がさらに高まります。
【目的別】介護施設におすすめのアロマ

介護施設は、日々施設内で過ごす利用者だけでなく、来訪者の方やスタッフなども出入りする空間です。
そのため、誰に向けてのものなのか、目的をはっきりさせることが大切です。
何を目的にするかで香らせる方法も変わりますので、ご紹介するアロマ空間デザインをぜひ参考にしてみてください。
利用者向け→認知症予防におすすめのアロマ
人気の香り
清らかなラベンダーの甘みと、ユーカリのすっきりとしたシャープな香りが完璧にマッチした美しい香り。
気分の鎮静作用があり、とてもリラックスできるスムーズな空間を創りだします。
優れた空気清浄効果によって、風邪やインフルエンザ、感染症対策に効果的な香りです。
タイムらしいハーブ感が効いた明るい香り。
食欲を増やしてくれる香り。メンタル的にも健康にしてくれます。
クリアでフレッシュな、抗菌力に優れたハーブをブレンドした清潔感ある香り。
ユーカリとレモングラスの絶妙なバランスにパインの木の香りで安定感を出しています。
スタッフ向け→ストレス緩和におすすめのアロマ
スタッフの職場環境改善のために、ストレス緩和のできる香りはいかがでしょうか?
居心地の良い空間づくりや、気持ちをリフレッシュしてくれるような香りが良いでしょう。
人気の香り
もぎたてのオレンジの香りがフレッシュにはじけるカジュアルな香り。オレンジの収穫期の胸いっぱいに広がる甘い匂いは、気分を明るくし、元気づけてくれます。
多くの人から愛されるこの香りは、幅広い空間に適しています。
甘い柑橘の香りの中にほのかにビターなニュアンスを感じさせる香り。剥きたてのオレンジの皮を 思い起こさせる元気な香りが気分を高め、クリエイティブな思考とリフレッシュ感を促します。高級感溢れるベルガモットの柑橘の香りは、イタリアを代表する柑橘であり、紅茶のアールグレイティの香り付けに使われ、上品で洗練された空間に溶け込み多くの人を魅了します。
爽やかでフレッシュな透明感と清潔感溢れる洗練された柑橘の香り。
空間を明るく、トーンアップさせます。気持ちが落ち込んだ時などに、リフレッシュし、明るい気分にさせてくれる香りです。
来訪者向け→消臭におすすめのアロマ
介護施設特有の匂いは、来訪者の方は敏感に感じ取ります。
消臭効果や空間を浄化してくれたり抗菌作用のある香りを使って、清潔な施設づくりに活用できます。
人気の香り
スーッと爽快、ペパーミントの透明感のある香り。空間を浄化し、清浄な空気にしてくれます。
脳内をすっきりさせ、集中力が高まり、前向きな気持ちにしてくれます。仕事したい時や元気に活動したいとき、やる気がでる香りです。
清々しいミントとユーカリの香り。 イライラや不安といったストレスを静め、リフレッシュできます。
クリニック、ショールームにおすすめのアロマです。
爽快で突き抜けるような香り。 気持ちの疲れを解きほぐしてリフレッシュされてくれます。木の香りが心地よく広がるだけでなく、抗菌効果も高く、フレッシュで深呼吸したくなるような爽快な香り。
殺菌におすすめのアロマ
人気の香り
ローズマリーはフレッシュでハーブの香りが特徴のアロマです。ローズマリーには抗菌・抗感染作用や虫除けなどの効果があるため、施設内の殺菌におすすめで、感染対策にも役立つでしょう。
また、鎮痛や血行促進などにも効果的で、肉体労働である従業員の筋肉痛や肩こりなどにも効果が期待できます。
柑橘系アロマの代表格であるレモンは、清涼感のあるフレッシュな香りが特徴です。すっきりとした香りが頭をリフレッシュさせ、前向きな気持ちにさせてくれます。
さらに、レモンには抗菌・消臭作用が期待できるため、風邪や感染症が気になる季節には、人が集まる空間で活用すると衛生的な環境づくりにも役立ちます。
介護施設取り入れやすいアロマの活用方法

介護の現場では、アロマテラピーが「心身のリラックス」や「生活の質(QOL)の向上」に役立つといわれています。
実際に様々な研究やアンケートから、アロマオイルを用いたハンドマッサージや芳香浴が、高齢者の不安や不眠、孤独感を和らげる効果が期待できると紹介されています。
ここでは、介護施設や在宅介護で取り入れやすい具体的なアロマの活用方法をご紹介します。
アロマディフューザーを活用する
もっとも手軽に香りを楽しめるのが、アロマディフューザーを使った方法です。
精油をディフューザーで拡散させることで、部屋全体に香りが広がり、自然と気持ちが落ち着きます。特に、就寝前にラベンダーやカモミールのアロマを使用すると、副交感神経が優位になり、眠りの質が高まるといわれています。
介護施設では、夜間に不安を訴える利用者や眠りが浅い方のケアとして取り入れると効果的です。また、専用機器がない場合でも、ティッシュやコットンなどに精油を染み込ませることで簡易的に香りを楽しむことも可能です。
また、アロマディフューザーの設置は、施設の入居者や利用者だけではなく、訪問者やスタッフへのリラックス空間の提供やケアにもつながります。
ディフューザーを設置する際のおすすめの設置場所については、次の段落で詳しく説明します。
ハンドマッサージで使用する

アロマオイルを使ったハンドマッサージは、介護の現場で特に人気のあるケア方法です。
高齢者の手は血流が滞りやすく、冷えやこわばりを感じる方が多いですが、やさしくオイルを使ってほぐしていくと、血行促進や関節の柔軟性向上につながります。
また、マッサージは「人の手に触れられる安心感」をもたらすため、孤独感や不安の軽減にも役立ちます。例えば、ラベンダーやスイートオレンジなどの精油をキャリアオイルで希釈して使用すると、香りとタッチングの相乗効果でより深いリラクゼーションが得られます。介護スタッフやご家族が簡単に実践できる点も魅力です。
アロマスプレーを使用する
もう一つ取り入れやすい方法が、アロマスプレーの活用です。
スプレーは空間に吹きかける他、枕やカーテン、衣類に吹きかけるだけで香りを楽しめるため、施設の居室や自宅介護の空間を快適に整えるのに最適です。
足湯にアロマをプラスして温活ケアとして活用する
冷えは高齢者にとって大きな悩みの一つです。特に冬場は体温調節が難しく、足先の冷えが不快感や不眠につながることもあります。そんなときにおすすめなのが、アロマを加えた足湯です。
洗面器やフットバスにお湯を張り、好みのアロマオイルを1~2滴垂らすだけで、心地よい香りと温熱効果を同時に得られます。ジンジャーやローズマリーなどは血行を促進し、体を芯から温めるのに役立ちます。
さらに、足湯は会話をしながら行えるため、介護スタッフと利用者さんのコミュニケーションのきっかけにもなります。
介護施設でおすすめのディフューザー設置場所

介護施設でディフューザーを設置する場合におすすめの設置場所について、以下で紹介します。
エントランスやロビー
施設に入った瞬間に心地よい香りが広がると、訪問者や利用者に良い印象を与えます。
エントランスやロビーは多くの人が通る場所なので、歓迎ムードを作り出すことができます。
リビングやラウンジ
利用者が集まってリラックスする場所に、アロマディフューザーを設置することで、穏やかな雰囲気を作り出し、リラックスを促進します。
また、ユーカリ、ティーツリーなどの消臭・抗菌効果のある香りを使用することで、感染症予防にもなり、清潔感のある空間を維持することができます。
療養室や個室
認知症や高齢者の方に対しては、香りによるリラックス効果が役立つことがあります。
入居者の不安や緊張を和らげるサポートとして、個別対応が必要な療養室や個室にアロマディフューザーを設置するのもおすすめです。
スタッフルーム
スタッフの休憩室にアロマディフューザーを設置することで、介護の現場で働くスタッフのリフレッシュをサポートします。
ストレス軽減やリラックス効果を持つ香りを選ぶと、スタッフの精神的・身体的負担の軽減が期待できます。
アロマ空間デザインにおけるよくあるご質問
介護施設にアロマ空間デザインを導入する際によくある質問に関してお答えします。
病気を抱える方も多いですが体調に影響しませんか?
不調のときに何かの香りでさらに悪化した…という経験から、香りの導入を懸念される方もいらっしゃいますが、そういったものはほとんどが香水による影響です。
エッセンシャルオイルの天然の香りの場合は、むしろリラックスしたり落ち着いたりといった効果が期待できます。
また、いい香りでもあまりに強くすると鼻が疲れてしまいます。香りの適切な濃度も大事な要素です。
専門業者に依頼すると高くなりますか?
当社にご相談にいらっしゃるお客様からは、自分たちで買ってきていろいろやってみたけど、香りが広がらない、香りが香水みたい、良い香りがない、毎日の清掃に手間がかかる、等のお困りごとをお伺いします。
スタッフ様のお手を煩わせるよりは、当社に一任いただいた方が、お手間や香りの空間デザインの仕上がりを含めたトータルで見ると、圧倒的にコストパフォーマンスはよいと思われます。
まとめ
介護施設にアロマを導入することには、以下のようなメリットがあります。
- 認知症予防につながる
- 抗菌作用がある
- 防カビ作用がある
- 利用者の快適さが向上する
- 施設のイメージアップにつながる
- スタッフのストレスが軽減し、作業効率が向上する
- 独自のサービスとして差別化できる
このように、アロマにはたくさんの効果やメリットがあり、費用対効果に非常に優れています。
アロマにより最適な空間を演出しデザインするアロマ空間デザインによって、施設を利用する方々にとって心地よい空間を提供しましょう。


