アロマウォーターは、別名、ハイドロゾル、フローラルウォーター、芳香蒸留水と呼ばれます。ここではアロマウォーターと呼んで解説していきます。アロマウォーターはこれまでは精油を採る工程での副産物とされてきましたが、生活に役立つものとして、その活用方法が近年再認識されています。
例えばクリニックなどで空気洗浄対策としてティートリーウォーターを使ったり、介護施設で抗菌対策としてローズマリーウォーターを使ったり、他にも、災害時に避難所での感染症予防のためラベンダーウォーターを使った例もあります。
今回はそんなアロマウォーターについて、いったいどんなものなのか、どのように生活に使えるのか、についてご紹介します。

アロマウォーター(芳香蒸留水)とは
歴史とエピソード
アロマウォーターは、古代から使われてきた自然療法の一つで、その起源は、紀元前に遡ります。
古代エジプトの最後のファラオであるクレオパトラが、バラのアロマウォーターを愛用したエピソードは有名です。彼女は美と健康に対して非常に意識が高く、さまざまな美容法を試みたと言われています。その中でも、バラのアロマウォーターは特に重要な役割を果たしていました。
バラのアロマウォーターは、保湿効果や抗炎症効果があるとされており、クレオパトラはこのアロマウォーターを化粧水として日々のスキンケアに使用したり、お風呂に入れて入浴を楽しみ、肌の潤いを保ち、柔らかく滑らかな肌を維持するために活用していました。
また、バラの香りは、気品とエレガンスを感じさせるため、クレオパトラのカリスマ性を高める重要な要素にもなりました。

クレオパトラの時代、エジプトの香料産業は高度に発達しており、香油や香水、アロマウォーターなどが広く使用されていました。バラのアロマウォーターも、その一環として利用されていたのです。
アロマウォーターが誕生した経緯
アロマウォーターの誕生は、蒸留技術の発展と密接に関連しています。
蒸留技術の歴史を遡ると、まさに5,000年にもなります。
蒸留技術は紀元前3000年頃にメソポタミアで発明され、後にアラビアの学者アヴィセンナ(イブンシーナ)が改良しました。
彼の技術革新により、植物のエッセンス、つまり精油をより効率的に抽出する方法が確立されました。
アロマウォーターは、この精油を取り出す蒸留プロセスの副産物として得られるものです。

アヴィセンナは、イスラム黄金時代の偉大な学者であり、彼の著作『医学典範』は中世ヨーロッパや中東で広く読まれ、影響を与えました。
彼は蒸留技術の改良を行い、植物から精油やアロマウォーターを抽出する方法を確立しましたが、この技術は、特にイランで発展していきました。
イランでは、アロマウォーターを日常的に使う歴史が長く、そのため現代でも、特にバラ水やオレンジブロッサムウォーターなどが料理や美容、医療に広く使われています。
バラ水は伝統的なデザートや飲み物の風味付けに使われるほか、肌の保湿やリフレッシュにも利用されます。
アロマウォーターを抽出する仕組み
アロマウォーターは、植物の花、葉、茎、根などを水蒸気蒸留法で抽出する際に得られる、水溶性の成分を含む水です。
具体的には、水蒸気を植物に通し、その蒸気が植物の芳香成分を含んだ後、冷却されて液体に戻ります。
この液体は二層に分かれ、上層は精油、下層はアロマウォーターとなります。
つまり精油には油溶性の芳香成分が、アロマウォーターには水溶性の芳香成分が含まれます。
アロマウォーターは、精油が持つ成分の微量を含みながらも、より穏やかな香りと効果を持っています。

アロマウォーター(フローラルウォーター・芳香蒸留水)と精油の違い
アロマウォーターの特徴
アロマウォーターは、精油より肌に優しく、直接使用することができます。
例えば、化粧水やトナーとして使ったり、髪や体にスプレーしたりすることができます。
また、アロマウォーターは抗菌・抗炎症作用を持つことが多く、日常のスキンケアに取り入れることで、肌のトラブルを防ぐ効果が期待できます。

精油との香りの違い
精油は非常に濃縮されているため、強い香りがしますが、アロマウォーターはそれに比べて軽やかで自然で柔らかな香りが特徴です。
また、精油の香りとアロマウォーターの香りは必ずしも一致しません。
精油の香りがそのまま薄くなったものを想像する方も多いかと思いますが、油溶性の香りと水溶性の香りですので香りの質も違うことがよくあります。
例えばラベンダーの精油とラベンダーのアロマウォーターでは、香りはだいぶ異なります。
精油の香りがフローラルなのに対して、アロマウォーターの香りは青々しい草っぽい香りになります。
精油とアロマウォーターの使い方の違い
精油は内服や直接肌に塗布する際に注意が必要です。
精油はその高濃度ゆえに、使用する際には必ず希釈が必要なため、例えばキャリアオイルや他の基材に混ぜて使用します。
一方、アロマウォーターは希釈せずにそのまま使えるため、扱いやすさが魅力です。
アロマウォーター(フローラルウォーター・芳香蒸留水)のメリット
禁忌が少ない
アロマウォーターは、含まれる芳香成分が低濃度で、刺激が少ないため、精油に比べて禁忌が少なく、幅広い人々に使用できます。
例えば、妊娠中の女性や小さなお子様、そしてペットにも安心して使用できる場合が多いです。
香りが穏やか
アロマウォーターの香りは、精油よりも穏やかです。そのため、香りが強すぎず、日常生活の中で使いやすいという利点があります。

アロマウォーター(フローラルウォーター・芳香蒸留水)の使い方とオススメ5選
日焼け、スポーツ後に
アロマウォーターは、日焼けやスポーツ後の肌のクールダウンに最適です。スプレーボトルに入れてお肌に直接スプレーするとよいでしょう。

虫刺され
虫刺されの痒みや炎症を和らげるために、アロマウォーターを使用することができます。
スプレーボトルに入れて、直接患部にスプレーするだけで簡単に使用できます。
ヘアケアに
アロマウォーターは、髪や頭皮のケアにも利用できます。また、髪に自然な香りを与えるため、ヘアミストとしても使用できます。
お風呂に
アロマウォーターをお風呂に入れることで、リラックス効果を高めることができます。また、アロマウォーターの保湿効果により、肌をしっとりとさせることができます。
加湿器に入れたりリネンウォーターとして
精油は、加湿器に入れるのはオススメしません。油分であるがゆえに、水と混ざらないため、加湿器内部を汚すこともあり、清潔に保てずカビを放出することにもなりかねないからです。
その点、アロマウォーターは、水溶性のため、加湿器に入れて部屋全体に香りを広げることができます。
また、リネンウォーターとして使用することで、シーツや枕に自然な香りをつけることができます。

アロマウォーター(フローラルウォーター・芳香蒸留水)の使用上の注意
偽和との見分け方
アロマウォーターの人気が高まる一方で、偽和品も市場に出回ることがあります。偽和品を見分けるためには、以下のポイントに注意しましょう。

まず、名前が「芳香蒸留水」もしくは「ハイドロゾル」「フローラルウォーター」となっているかどうかです。
「アロマウォーター」は通称ですので、ものによっては、精油に水を混ぜたものや、合成香料を混ぜたもの、である可能性もあります。
植物の学名が書いてあるかどうかも見分けるポイントです。原材料に「香料」などが記載されてないかどうかも確かめましょう。
開封後は早く使う
100%ピュアなアロマウォーターは、保存剤や安定剤、等が入っていません。そのため、開封後は、早めに使い切るようにし、保存には気を付ける必要があります。
ほとんどが水分ですので劣化も早いため、なるべく遮光して、冷暗所で保存することが望まれます。
まとめ
アロマウォーターは、その多様な使い方と効果から、日常生活に取り入れることで心身の健康をサポートしてくれます。
精油とは違った魅力がたくさんありますので、是非、アロマウォーターをうまく生活に取り入れて、豊かなライフスタイルを楽しんでください。