アロマによる香りの空間デザインは、香りの力を最大限に活用し、ブランディングや購買意欲の向上、心地よい職場環境の創造など、居心地の良い職場や空間を創り出すアプローチです。
ホテルやアパレルブランドで活用されるイメージがありますが、オフィスでも採用例が増えており、心身のリフレッシュを追求する現代のライフスタイルに合致した手法として注目されています。
そこで本記事では、アロマ空間デザインの事例として有名企業と弊社事例を紹介したうえで、アロマ空間デザインの4つの効果について紹介します。
アロマ空間デザインとは?
アロマ空間デザインとは、目的や空間に合わせた香りを使って行うブランディングのことです。「香りによるイメージアップ」と「精油が持つ作用」の2つの要素を取り入れることで、顧客はもちろん従業員にとっても居心地のよい空間を作る手法です。
例えば、ホテルや百貨店へ訪れた際に、香りを感じたことがある方もいるのではないでしょうか。ホテルでは心が落ち着くやすらぎのある香り、百貨店では各ブランドを想起する香りといったように、香りは記憶と密接に関係しています。
香りと記憶の関係性を通じて五感へ直接アプローチできる点は、アロマ空間デザインならではの強みです。近年では大手企業や接客業を営む企業を中心に、香りを使った空間づくりの重要性が広く認知され始めています。
アロマ空間デザインの4つの効果
香りの空間デザインには「ブランディングに役立つ」「顧客ロイヤリティを高める」「嫌な臭いによるマイナスイメージを防ぐ」「従業員のモチベーションアップ」等の4つの効果があります。
ブランディングに役立つ
嗅覚は、五感の中で唯一、感情や本能を司る大脳辺縁系に直接伝わるため、ブランディングに大きな効果を発揮します。また、香りには「プルースト効果」と呼ばれる、イメージに加えて感情や思い出を想起させる効果があります。
たとえば、リゾートホテルのラウンジで、心地よい香りに包まれた素敵な経験があったとします。それから数年後に、そのホテルからDMが届き、封を開けると、記憶に深く刻まれた懐かしい香りがします。
香りを嗅いだことにより当時の思い出がよみがえり、それがまたホテルを予約する動機につながるのです。これが香りのプルースト効果に基づいたブランディング効果です。
顧客ロイヤリティを高める
香りの空間デザインにより、企業やサービスに対する信頼や愛着も高まります。
居心地の良い空間での、満足度の高い体験から価値を感じた顧客は、その経験を口コミやSNSで拡散してくれたり、サービスを他者に勧めてくれる可能性が大いにあります。
お客様のロイヤリティを高めることで、継続利用の促進などの直接的な利益だけではなく、企業やブランドイメージの向上にもつながります。
嫌な臭いによるマイナスイメージを防ぐ
アロマ空間デザインは、いい香りを付加するイメージがありますが、消臭面でも活躍します。
換気しにくい地下などのカビ臭さ、飲食店の古い油の臭いや排水溝の臭い、体臭など、店内が嫌な臭いに包まれているとネガティブな印象に繋がります。そこで消臭効果の高いアロマを香らせることで、清潔感のある空間を演出することができます。
ただし、消臭の際には専門的な知識が必要です。単に良い香りをプラスするだけでは、臭いが混じって余計不快に感じる方もいるので扱いには注意が必要です。
従業員のモチベーションアップ
香りを感じることによって、従業員の集中力が高まり、ストレスが軽減され、リラックス効果が得られ、気分がリフレッシュされるといった利点もあります。
アロマによるストレス軽減についてはこちらの記事をご覧ください。
一部の企業では、オフィススペースとは別に、香りを活用したリラックススペースが設けられており、香りを取り入れた職場環境の改善が、従業員の生産性向上につながっています。
アロマ空間デザインの需要が高い施設4選
アロマ空間デザインが求められる理由には、気になるにおいを改善したい、ブランディングを通じて空間の価値を高めたい、従業員に快適に働いてもらいたいなどのニーズがあります。
具体的には、アロマ空間デザインの需要が高いのは下記のような施設です。
- 歯科・美容整形外科
- ホテル・旅館
- ショップ・ショールーム
- オフィス
- そのほか活用しやすい施設
ここからは、各施設でアロマ空間デザインが求められる理由について解説します。
歯科・美容整形外科
歯科・美容整形外科では、主に下記の理由からアロマ空間デザインが取り入れられています。
- 薬品による臭いを和らげる
- 治療中の痛み・不安を軽減する
- 従業員の働きやすさを改善する
患者様のなかには、独特の香りや治療中の痛み・不安を理由に病院に対して苦手意識を持つ方が少なくありません。安らぎを与えられる香りを活用すると、病院=怖いといったイメージが払拭しやすくなるでしょう。
アロマ空間デザインで使用する精油には、リラクゼーション効果や集中力を高める効果もあります。従業員は仕事によるストレスを緩和できるといったメリットが得られます。
ホテル・旅館
ホテル・旅館も、アロマ空間デザインの需要が高い場所の一つです。
ホテル・旅館の場合、アロマ空間デザインの効果によって非日常感を演出できます。思い出と香りがリンクすることで、特別な旅行であったという記憶が残りやすくなるでしょう。また、居心地のよさを演出できるため、リピーターを獲得できる可能性も高まります。
特に高級ホテル・老舗旅館を中心に、アロマ空間デザインが取り入れられるケースは少なくありません。中には、利用しているアロマをお土産として販売している施設もあります。
ショップ・ショールーム
ショップ・ショールームも、アロマ空間デザインが必要とされやすい場所の一つです。特定の商品を取り扱う店舗やブランドのイメージアップを図るショールームでは、商品・ブランドを想起する香りを使うことで独自の世界観を演出できます。
また、複数の店舗を構えているショップでは、全店舗で同じ香りを活用するとブランディング効果を高められます。
例えば、街中で顧客が自社の香りを感じたときに「この香りはあのブランド」といったように、ブランドを思い出すきっかけを作ることも可能です。
オフィス
アロマ空間デザインは、オフィスに取り入れることも有効です。オフィスに取り入れる場合、企業のブランディングやストレスマネジメントなどに効果を発揮します。
例えば、エントランスや応接室などで香りを活用すれば、おもてなしができるほか、顧客の緊張感をほぐせます。コミュニケーションが円滑にとりやすくなり、商談の成功率への貢献も期待できます。実際に当社のお客様で、来訪者との会話のきっかけとなっている、といったアンケート調査も出ています。
事務所や会議室へアロマ空間デザインを取り入れることで、働きやすい環境に生まれ変わります。業務に集中しやすくなる・ストレスを緩和できるといった効果を得られ、業務効率アップや離職防止に繋げられるでしょう。
そのほか活用しやすい施設
アロマ空間デザインは、ほかにも次のような施設で活用できます。
- 塾
- コワーキングスペース
- ネットカフェ・漫画喫茶
- 博物館・美術館・水族館 など
例えば、塾やコワーキングスペース、ネットカフェ・漫画喫茶などでは、集中力を高める働きを持つアロマが有効です。「勉強・仕事が捗る」「快適に過ごせる」といったブランディングができ、利用者を増やせるでしょう。
博物館・美術館・水族館では、リラックス効果がある香りが適しています。世界観に没入できる環境を提供できれば、来場者の満足度が高まります。
【目的別】アロマ空間デザインで活用したい香り
アロマ空間デザインで活用する香りは、目的に応じて使い分けることが重要です。そもそも、香りによって得られる効果は異なりますので、目的に適した香りを使いましょう。
ここからは、次の項目に分けてアロマ空間デザインで活用したい香りを紹介します。
- 集中力を高めることが目的の場合
- やる気を出すことが目的の場合
- リラックスすることが目的の場合
集中力を高めることが目的の場合
集中力を高めることが目的の場合、次の香りがおすすめです。
香り | 特徴 |
レモングラス | レモンのようなフレッシュな香りが特徴で、脳を活性化させる働きが期待できます。精神疲労にも効果的で、香りを嗅ぐと前向きな気持ちになれます。 |
ユーカリ | 鎮静作用があり、心身をリラックスさせる効果があります。集中力を高める働きもあり、仕事・勉強に取り組みたいときに有効です。 |
ローズマリー | モノテルペン炭化水素類の気持ちを強くする作用や1,8シネオールやカンファーの刺激的な香りで気持ちをリフレッシュします。頭脳明晰効果があり、記憶力や集中力の向上にも有効です。 |
やる気を出すことが目的の場合
下表は、やる気を出すことが目的の場合におすすめの香りをまとめたものです。
香り | 特徴 |
ベルガモット | スイートライムとレモンの交雑種で、気分を高揚させる効果を持っています。不安・緊張を緩和する効果もあり、やる気を出したいときにおすすめです。 |
ペパーミント | 体を透き抜けるスッキリとした香りが特徴です。気持ちを引き締めるほか、リラックス効果も有しており、心身のバランスを整えられる香りとなっています。 |
グレープフルーツ | ほどよい苦味と柑橘系のスッキリとした香りが特徴で、気持ちを高めてくれます。嗅ぐと前向きな気持ちになれるため、自己批判や欲求不満による心のうっ滞を浄化できます。 |
リラックスすることが目的の場合
リラックスすることが目的の場合は、下記の香りを取り入れることをおすすめします。
香り | 特徴 |
ラベンダー | 古代ローマ時代から知られている香りで、入浴剤や香水など広く取り入れられています。鎮痛作用・誘眠作用・抗うつ作用などが期待できます。 |
ゼラニウム | 甘く、少しバラを思わせる香りが特徴で、鎮静効果が期待できます。不安や抑うつにも効果的で、メンタルケアに役立ちます。 |
イランイラン | アロマテラピーにおいて、エジプトやローマなどの古代文明から取り入れられている香りです。数ある香りのなかでも、リラクゼーション効果に優れており、緊張や不安を和らげられます。 |
アロマ空間デザインの活用事例
有名企業や一流企業では、香りを空間デザインに活用した事例が数多くあります。
アパレル、ホテル、航空業界など、ホスピタリティを重んじる業界の事例をいくつか紹介します。
Abercrombie & Fitch(アバクロ)
アバクロの通称で知られるアメリカ発のブランド「Abercrombie & Fitch」は、店舗の空間デザインにアロマを用いてブランドの世界観をすり込む事により、ブランドのエンゲージメントを高めています。
香りを用いたセントマーケティング(Scent Marketing)についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
当初は、ブランドのイメージに合わせたセクシーな香りを展開していましたが、ブランドコンセプトをユニセックスへと変更する中で、香りもイメージに合ったものに修正を加えています。
競争の激しいアパレル業界の中で、他社との差別化をはかり、熱心なファンを育てていくために香りの空間デザインを有効に活用しています。
ウェスティンホテル
1930年にアメリカで創業、24カ国に120軒以上を展開する歴史と伝統のある「ウェスティンホテル」は、心を落ち着かせ疲れを癒やす「ホワイトティー」の香りを採用しています。
ホワイトティー(白茶)の茶葉、杉のウッディチップとバニラを調合し、さらにムスクで深みと豊かさを加えた、ウェスティンホテルのオリジナルブレンドです。
ANA
日本の大手航空会社である全日本空輸(ANA)では、「Inspiration of JAPAN」というANAのブランディングに従い、12種類の配合した100%天然アロマを空港のラウンジや機内で提供されるおしぼりやハンドソープに使用しています。
香りは、日本古来の高野槙や吉野檜、またミントやローズマリーなど、人の感性に自然に本質的に響く香りに仕上げています。
旅の気分を盛り上げるクールで個性的な強さと、深い森林を思わせる優しく豊かな広がりを兼ね備えており、ANAのブランディングを体現しています。
すみだ水族館
すみだ水族館では、科学的なデータに基づいて調香されたアロマを用いて各ゾーンや時間に合わせて演出を変えており、例えば、エントランスには、交感神経に働きかけリラックス効果を与える「アロバランス」というアロマを用いています。また、夕方5時以降はエントランスが「レッドウッド」と呼ばれる落ち着いた香りに変わります。
独自の香りを用い入館者のイメージを作り上げた、すみだ水族館の例はマーケティングの成功例と言えるでしょう。
トヨタ自動車
トヨタ自動車が展開している高級車ブランド「LEXUS」のショールームでは、香りで「おもてなし空間」を演出しています。
ブランドイメージに合わせたラグジュアリー感、やすらぎ、リラックス効果を演出するとともに、春はフラワー、夏はミント、秋はハーブ、冬はウッドという具合に、四季に応じてフレグランスを使い分けています。
ウェルネスコンサルティング株式会社が実施したアロマ空間デザイン事例
当社では、お客様のご要望をヒアリングした上で、課題解決に最適なブレンドをご提案しています。
ここでは、導入事例を一部ご紹介します。
MAZDA様(車ショールーム)
お客様がリラックスできる空間をということでラベンダーをブレンドした、スタイリッシュな空間に合う品のあるしなやかな香りです。キーワードは、洗練・おもてなし・リラックス・居心地のよい・最新。
透明感のある洗練された空間を表現するためにユーカリやスペアミント、ペパーミント、ジュニパーなどをブレンドしています。香りがあることで空間全体がいきいきとした輝きに満ちた空間に仕上がっています。
箱根湯本ホテル様(ホテル・旅館)
創業60年の歴史あるホテル様。入ってきたときに清々しいお気持ちになっていただけるよう、各フロアにて森林をイメージした香りです。
抗菌・防カビ・虫よけを意識して、サイプレスやファーニードル、スペアミントなどをブレンド、歴史を感じさせる重厚な落ち着きに似合うようローズウッドやヒノキリーフなどをブレンドしています。
アニバーサリーデンタルギンザ様(銀座最大級の審美歯科)
信頼感とホスピタリティーを大事されているサロン様です。太陽のような明るい香りが心まで笑顔にするスイートオレンジの精油を用いてお客様に幸福感を感じていただけるような香りをコーディネートしました。
「ご来院の皆様が心地よくリラックスしていただける上質な空間をご提供しております。」とご好評いただいています。
ミートキッチン様(飲食)
地下にある店舗様のため、においがこもりやすいというお悩みがありました。
そのため、消臭効果の高いユーカリ、ペパーミント、レモングラスをブレンド。また、飲食店ということで、食欲増進させるようなスパイス系の香り、クローヴ、タイムなどをブレンドしており、アロマが一石二鳥の効果を発揮しています。
飲食店への香り導入が大成功した事例です。
アロマ空間デザインを取り入れる際の注意点
アロマ空間デザインを取り入れる際には、下記の点に注意しましょう。
- ほかの香り雑貨を置かない
- 古くなった精油は捨てる
アロマ空間デザインを取り入れる場合、ほかの香り雑貨を併用しないことが大切です。
匂いが混ざると、香りによるブランディングが機能しなくなる恐れがあり、こだわって選んだアロマ空間デザインの香りが機能せず、意味がないものになってしまいます。
それから、古くなった精油は使用し続けるのではなく、捨てることが重要です。精油には使用期限が設けられており、開封後は半年から1年以内に使い切ることを推奨します。特に機械に入れて使用する場合は通常より早く酸化し、変色して粘性も高くなり香りも変化するため、3か月に1回は交換しましょう。
精油は天然成分で作られているため、空気や熱、光などによって少しずつ劣化します。香りに違和感がある場合は、精油が劣化しているサインです。使い続けると体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、替えることをおすすめします。
アロマ空間デザインは業者へ依頼することがおすすめ!導入する際の手順も解説
アロマ空間デザインを活用してブランディングやストレスマネジメントを進める場合、業者へ依頼することがおすすめです。業者へ依頼すれば、目的・ニーズに適したアロマ空間デザインを実現できます。
更に、従業員様が、香りの状態を気にしたり、交換したり清掃したり、電源ONOFFしたり発注したり…というのは、かなりのお手間となります。
独自の解釈でアロマ空間デザインを進めて「思った効果を得られなかった」と失敗する事業者様があとを絶ちません。また、従業員様のお手間を考えると、きちんとした業者に依頼する方が費用対効果はよいでしょう。
香りを使って企業ブランディングに取り組みたい・働きやすい職場を作りたいと考える場合は、ぜひ一度、ウェルネスコンサルティング株式会社へご相談ください。当社でサポートする場合、次の手順でアロマ空間デザインを導入しています。
- 空間の用途・目的・ニーズなどのヒアリング
- ニーズに適した香りと機材の提案・導入
- 定期清掃・点検・修繕
ウェルネスコンサルティング株式会社は、これまでに多くの企業や店舗、商業施設のアロマ空間デザインをコーディネートしてきました。高い専門知識と経験をもとに、ニーズに適した空間作りを行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。