バラは古くから「花の女王」として愛され、その美しい姿だけでなく、豊かな香りでも人々を魅了してきました。
ところが、ひと口に「バラの香り」といっても、実はすべて同じではありません。
甘く華やかな香り、紅茶を思わせる香り、果物のようなみずみずしい香り、スパイスやハーブを感じさせる香り……。
長い歴史の中でさまざまなバラが交配されることによって、現代のバラには驚くほど多彩な香りが生まれています。
今回は、バラの歴史をたどりながら、現代バラに見られる「7つの香りのタイプ」をご紹介します。
本記事の監修者
ウェルネスコンサルティング株式会社
代表取締役 葵 智恵子


ホテル、車ショールーム、クリニックをはじめ全国200ヶ所以上で香り空間デザインを実施。
アロマの資格として、英国IFA認定国際アロマセラピストという、英国では看護師と同等の医療従事者として扱われる資格を取得。アロマ検定本『アロマ物語』監修。
アロマ空間デザイナー養成のためのアロマ空間デザインスクールを経営しており、全国から法人・個人の受講者が集まっている。
【保有資格】
- 英国IFA(国際アロマセラピスト連盟)認定 国際アロマセラピスト
- (公社)AEAJ認定 アロマセラピスト
- (公社)AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター
- 日本フレグランス協会認定 フレグランスセールススペシャリスト
- フランス調香師学校Grasse Institute of Perfumery Natural Fragrances Stage修了 Diploma取得
バラの歴史 ― 人々を魅了してきた花と香り
バラの歴史は非常に古く、人が品種改良を始めるよりもはるか以前から、北半球のさまざまな地域に野生のバラが自生していました。
やがて人々は、その美しい花や香りを楽しむためにバラを栽培するようになります。
バラの種類は、3~4万にも及ぶ
現在、バラの種類は、3〜4万種以上あると言われていますが、その家系図を極限まで遡ると、世界の特定の「8種類の原種(野生種)」の交雑に行き着きます。
そしてその8種類のうち3種類が日本原産のバラなのです。そのうちの一つ「ハマナス」は、ヨーロッパに渡り、「寒さに強く、病気にかかりにくい強健な体質」を現代のバラに受け継がせるための交配親として重宝されました。
その後、東洋と西洋のさまざまなバラが交配されていくことで、花の色や形、咲き方だけでなく、香りにも多様な特徴を持つバラが誕生していきます。
現在私たちがバラ園や花店で目にするバラの多くは、こうした長い品種改良の歴史の先に生まれた「モダンローズ(現代バラ)」です。
そして現代バラの魅力のひとつが、非常に複雑でバリエーション豊かな「香り」なのです。
ヨーロッパや中東では、バラは観賞用としてだけでなく、その香りも珍重されました。
香りが重宝されたダマスクローズ
特に香りの世界で重要なのが、ダマスクローズです。
濃厚で華やかな香りを持つダマスクローズは、現在でもローズオイルやローズウォーターなどの原料として知られ、「バラらしい香り」の代表的な存在となっています。
現代バラの香りは「7タイプ」に分けられる
バラの香りを長年研究してきた香料分析の専門家・蓬田勝之氏は、現代バラの香りを特徴によって7つのタイプに分類しています。
同じバラでも、実際には複数のタイプの香りをあわせ持つことがあります。
「このバラは何の香りに近いだろう?」
そんな視点で香ってみると、バラの楽しみ方がさらに広がります。
ダマスク・クラシック~華やかで、強い甘さをもつ香り~
いわゆる「バラらしい香り」をイメージしやすい、クラシカルなローズの香りです。
2-フェニルエタノールやゲラニオールなどが主な香り成分として挙げられ、華やかで甘く、豊かな芳香を感じさせます。
香水や化粧品などで「ローズの香り」として表現されるイメージにも近いタイプです。
<代表的な品種>
芳純、香具山、ティファニー など

ダマスク・モダン~情熱的で濃厚な甘さをもつ香り~
ダマスク系の華やかさを持ちながら、より濃厚で深みのある甘さを感じるタイプです。
ゲラニオール、ネロール、シトロネロールなどの成分が香りに関係しています。
華やかで存在感があり、現代の芳香バラを代表する香りのひとつです。
<代表的な品種>
パパ・メイアン、ネージュ・パルファン、シャルル・マルラン など

フルーティー~爽やかで若々しい、果物のような香り~
バラを香っているのに、
「桃のような香りがする」
「リンゴや洋梨みたい」
と感じることがあります。
ローズの甘い香りに、果実を思わせるみずみずしいニュアンスが加わったのがフルーティータイプです。
華やかでありながら親しみやすく、明るく爽やかな印象を与えます。
<代表的な品種>
ダブル・デライト、楽園、フリージア など

ティー~紅茶を思わせる、上品で優雅な香り~
紅茶の茶葉を思わせるような、やわらかく上品なニュアンスを持つ香りです。
濃厚な甘さというより、すっきりとした優雅さが特徴。
現代のバラにも多く受け継がれている、代表的な香りのひとつです。
<代表的な品種>
デュシェス・ドゥ・ブラバン、ディオラマ、日本キルン など

ブルー~女性らしい芳醇な甘さをもつ香り~
ブルー系のバラに特徴的に感じられる香りです。
ダマスク・モダン系の甘さに、木や葉などを思わせるニュアンスが加わり、一般的なローズとは少し異なる独特の芳香になります。
甘く華やかでありながら、どこかクールで奥行きのある印象です。
<代表的な品種>
ブルー・ムーン、ブルー・リバー、スターリング・シルバー など

スパイシー~控えめで成熟した甘さをもつ香り~
クローブなどのスパイスを思わせるニュアンスを持つタイプです。
単純に甘いだけではなく、ピリッとしたアクセントや深みが加わるため、大人っぽく落ち着いた印象があります。
じっくり香るほど複雑さを感じられるタイプです。
<代表的な品種>
デンティ・ベス、サラ・ヴァン・フリート、ヘップスター など
ミルラ~大人っぽく、落ち着いた印象の香り~
アニスを思わせるような独特の甘さや、ハーブのようなニュアンスを感じさせる香りです。
一般的にイメージする華やかなローズとはかなり異なり、個性的で落ち着いた印象があります。
「これもバラの香りなの?」と驚く方もいるかもしれません。
<代表的な品種>
セント・セシリア、グラミス・キャッスル、セプタード・アイル など

(写真:photolibraryより引用)
ひとつのバラの中にも、いくつもの香りがある
ここまで7タイプをご紹介しましたが、実際のバラの香りは、必ずしもひとつのタイプだけでできているわけではありません。
たとえば、甘く濃厚なダマスク系の香りを中心に、フルーティー、ティー、スパイシーなど、いくつもの要素を併せ持つ品種もあります。
さらに、同じ品種でも開花の状態や時間帯、気温、湿度などによって香り方が変化することがあります。
それこそが、天然の花を香る面白さでもあります。
バラを見つけたら「何の香り?」と感じてみてください
バラ園を訪れると、つい色や花の形に目が向きます。
けれど、少し立ち止まって一輪ずつ香ってみると、
「これは紅茶みたい」
「こちらは果物っぽい」
「同じピンクのバラなのに、全然違う」
という発見があります。
「バラの香り」というひとつの香りが存在するのではなく、バラには一輪一輪、それぞれの香りがあります。
次にバラに出会ったときには、ぜひ花の姿だけでなく、その一輪が持つ「香りの個性」にも注目してみてください。
まとめ
バラの香りは、ひとことで「ローズの香り」と表せないほど多彩です。華やかで濃厚なダマスク系、みずみずしいフルーティー、紅茶を思わせるティー、個性的なブルーやスパイシー、ミルラなど、それぞれに異なる魅力があります。
長い歴史の中でさまざまな品種が交配され、花の色や形とともに、香りも豊かに進化してきました。
バラに出会ったら、ぜひ「いい香り」で終わらせず、「どんな香りに感じるだろう?」と意識してみてください。香りの違いを知ることで、一輪のバラを味わう楽しみが、さらに広がるはずです。
