高齢化が進む現代において、「認知症予防」は多くの人にとって関心の高いテーマです。日々の生活の中でできる対策を探している方も多く、その中で注目されているのが「アロマ(アロマテラピー)」です。
アロマは、植物由来の香りを生活に取り入れるシンプルな方法ですが、香りが脳に働きかける特性から、認知機能との関係についても関心が寄せられています。
本記事では、認知症予防とアロマの関係性、アロマが効果的とされる理由、おすすめの精油や取り入れ方までをわかりやすく解説します。
本記事の監修者
ウェルネスコンサルティング株式会社
代表取締役 葵 智恵子


ホテル、車ショールーム、クリニックをはじめ全国200ヶ所以上で香り空間デザインを実施。
アロマの資格として、英国IFA認定国際アロマセラピストという、英国では看護師と同等の医療従事者として扱われる資格を取得。アロマ検定本『アロマ物語』監修。
アロマ空間デザイナー養成のためのアロマ空間デザインスクールを経営しており、全国から法人・個人の受講者が集まっている。
【保有資格】
- 英国IFA(国際アロマセラピスト連盟)認定 国際アロマセラピスト
- (公社)AEAJ認定 アロマセラピスト
- (公社)AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター
- 日本フレグランス協会認定 フレグランスセールススペシャリスト
- フランス調香師学校Grasse Institute of Perfumery Natural Fragrances Stage修了 Diploma取得
認知症予防とアロマの関係とは

認知症は、記憶や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に影響が出る状態を指します。現在のところ、発症を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、生活習慣や環境が影響する可能性があると考えられています。
その中でアロマが注目されている理由の一つが、「嗅覚」と脳の関係です。
香りは、鼻から入ったあと、感情や記憶に関わる脳の領域(大脳辺縁系)へ直接伝わるとされています。この部分は記憶とも深く関係しているため、香りの刺激が脳に影響を与える可能性があると考えられています。
また、嗅覚は加齢とともに衰えやすい感覚の一つとも言われており、香りを意識的に取り入れること自体が、日常的な刺激の一つになると捉えられています。
アロマが認知症予防に活用される理由

アロマが認知症予防として注目されている理由について、以下で紹介します。
嗅覚刺激が記憶に関わる脳領域へ直接働きかけるため
アロマが注目される理由の一つは、嗅覚の伝達経路にあります。香りの情報は、嗅神経を通じて脳の中でも記憶や感情に関わる領域(海馬や扁桃体など)へ比較的ダイレクトに伝わるとされています。
これらの領域は認知機能と深く関係しており、加齢や認知症の進行とともに変化がみられることが知られています。そのため、香りを感じるという刺激そのものが、日常的な脳への働きかけの一つとして注目されています。
また、嗅覚機能の低下が認知機能の変化と関連する可能性を示す研究もあり、嗅覚を意識的に使うことの重要性が指摘されています。
記憶や感情の想起を促し、脳の活性化につながる可能性があるため
香りには、過去の記憶や感情を呼び起こす特徴があります。これは「プルースト効果」と呼ばれ、嗅覚と記憶が密接に結びついていることを示す現象です。
特定の香りによって思い出や体験が呼び起こされることで、脳内で記憶の再生や整理が行われると考えられています。こうしたプロセスは、脳にとって刺激となり、認知機能の維持という観点からも関心が寄せられています。
実際に、高齢者のケアにおいて香りをきっかけに会話や回想が促されるケースもあり、日常生活の中で脳を使う機会を増やす手段として活用されています。
生活習慣の改善や継続的なセルフケアにつなげやすいため
認知症予防では、運動・食事・睡眠などの生活習慣を整えることが重要とされています。アロマは、こうした生活の質を高めるサポートとして取り入れやすい点が特徴です。
例えば、朝と夜で香りを使い分けることで生活リズムにメリハリをつけたり、リラックスタイムを意識的につくることで習慣化につなげたりすることができます。
また、ディフューザーやハンカチなどを使えば手軽に取り入れられるため、無理なく継続しやすいのも大きなメリットです。認知症予防は長期的な取り組みが前提となるため、この「続けやすさ」は重要な要素といえます。
認知症予防におすすめのアロマ5選

認知症予防の観点では、「嗅覚への刺激」「生活リズムのサポート」「気分の切り替え」といった要素が重要とされています。ここでは、それらの観点から日常に取り入れやすい精油を5つ紹介します。
ローズマリー
ローズマリーは、シャープで清涼感のある香りが特徴の精油です。香りによって気分を切り替えたいときや、頭をすっきりさせたい場面でよく使われます。
認知症予防の文脈では、日中の活動時間に取り入れる香りとして注目されることが多く、朝のスタートや作業前のリフレッシュに適しています。すっきりとした香りが意識の切り替えをサポートし、生活リズムにメリハリをつけたい方にもおすすめです。
「朝なかなか頭が働かない」「日中の集中力を高めたい」と感じる方に取り入れやすい精油です。
レモン
レモンは、爽やかで軽やかな柑橘の香りが特徴で、気分転換に適した精油です。空間をすっきりと整える香りとしても人気があります。
認知症予防の観点では、日中の活動をサポートする香りの一つとして取り上げられることがあり、ローズマリーと同様に朝〜昼の時間帯に取り入れるのがおすすめです。
気分が沈みがちなときや、リフレッシュしたいタイミングで取り入れることで、生活の中に前向きなリズムをつくりやすくなります。
真正ラベンダー
ラベンダーは、やさしいフローラルの香りで、アロマの中でも定番とされる精油です。リラックスタイムに取り入れやすく、幅広いシーンで活用されています。
認知症予防においては、夜のリラックスタイムに取り入れる香りとしてよく紹介されます。1日の終わりに落ち着いた時間をつくることで、生活リズムを整えるサポートにつながる可能性があります。
「寝る前に気持ちを落ち着けたい」「ゆったりした時間を過ごしたい」という方に適した香りです。
オレンジスイート
オレンジスイートは、甘くやわらかい柑橘の香りで、アロマ初心者でも取り入れやすい精油です。親しみやすい香りで、気分転換とリラックスの両方に使いやすいのが特徴です。
認知症予防の文脈では、ラベンダーと同様に夜の時間帯やリラックスしたい場面での使用が適しています。強すぎない香りのため、日常的に無理なく続けやすい点もメリットです。
「強い香りが苦手」「自然にリラックスしたい」という方におすすめです。
ペパーミント
ペパーミントは、清涼感のあるすっきりとした香りが特徴で、短時間で気分を切り替えたいときに適した精油です。
認知症予防の観点では、集中力が途切れたときや、頭がぼんやりするときのリフレッシュ用途として活用しやすい香りです。強めの香りのため、少量で使用するのがポイントです。
「作業中に眠気を感じる」「短時間で気分を切り替えたい」といった場面に向いています。
認知症予防におすすめのアロマの取り入れ方

認知症予防におすすめのアロマの取り入れ方を紹介します。
ディフューザー(芳香浴)
ディフューザーを使って香りを空間全体に広げる方法は、アロマを日常生活に取り入れるうえで最も基本的な使い方です。部屋全体にやさしく香りが広がることで、無理なく嗅覚への刺激を取り入れることができます。
特にリビングや寝室など、長時間過ごす空間で使用することで、自然に香りを感じる環境をつくることができます。朝はすっきりとした香り、夜は落ち着いた香りといったように時間帯で使い分けることで、生活リズムにメリハリをつけやすくなります。
香りは強すぎないように調整し、ほのかに感じる程度にすることで、長時間でも快適に取り入れることができます。
ハンカチ・ティッシュでアロマを使用する
ハンカチやティッシュに精油を1滴垂らして香りを楽しむ方法は、外出先でも手軽に取り入れられる使い方です。バッグに入れておくことで、気分を切り替えたいときやリフレッシュしたいタイミングで、すぐに香りを感じることができます。
この方法は香りの広がりが限定されるため、周囲に配慮しながら使いやすい点も特徴です。仕事中や移動中など、短時間で気分を整えたい場面に適しています。
特別な道具が不要なため、アロマ初心者でも取り入れやすく、日常のセルフケアとして続けやすい方法です。
アロマバス
入浴時にアロマを取り入れる「アロマバス」は、香りと温かさを同時に感じられる方法です。湯気とともに香りが浴室全体に広がることで、リラックスしやすい環境をつくることができます。
洗面器にお湯を張り、そこに精油を数滴垂らして香りを広げる方法であれば、手軽に取り入れることが可能です。1日の終わりにゆったりとした時間をつくりたいときに適しています。
心身を落ち着かせる時間を意識的につくることで、生活にメリハリを持たせやすくなります。
アロマトリートメント
キャリアオイルで希釈した精油を使用するアロマトリートメントは、香りと触覚の両方を活用できる方法です。手や腕、首まわりなどにやさしくなじませることで、リラックスした時間を過ごしやすくなります。
香りを感じながらゆっくりとケアを行うことで、自分自身と向き合う時間をつくることができ、気分の切り替えにもつながります。特に、日中の疲れや緊張を感じやすい方におすすめです。
肌に使用する際は、必ず希釈してから使うことが基本となります。
アロマを取り入れる際の注意点

アロマを使用する際には、いくつか注意事項があります。
精油は必ず希釈して使用する
精油は植物の成分が凝縮された高濃度のものです。そのため、肌に直接使用する場合は原液のまま使うのではなく、必ずキャリアオイルで適切に希釈することが基本です。
濃度が高すぎると刺激を感じることもあるため、少量から試すことが大切です。特に肌が敏感な方は、事前にパッチテストを行うなど慎重に取り入れることが望ましいです。
香りの強さは控えめに調整する
アロマは強く香らせるほど良いわけではなく、心地よいと感じる範囲で使うことが重要です。香りが強すぎると不快感につながったり、長時間の使用で香りに疲れてしまうことがあります。
空間にほんのりと広がる程度を意識し、少し物足りないと感じるくらいの強さで調整するのがポイントです。
体調や状況に合わせて使用する
体調が優れないときや、香りに敏感になっているときは、無理に使用しないことも大切です。また、ライフステージによっては使用に注意が必要な場合もあります。
その日の体調や気分に合わせて取り入れることで、より快適にアロマを楽しむことができます。無理に続けるのではなく、自分の状態に合わせて柔軟に使うことがポイントです。
まとめ
認知症予防においてアロマは、香りによる嗅覚刺激を通じて脳に働きかけたり、記憶や感情の想起を促したりする点で注目されています。ただし、アロマ単体で予防できるものではなく、あくまで生活習慣を整えるためのサポートとして取り入れることが重要です。
また、ローズマリーやレモンのように日中の活動をサポートする香りと、ラベンダーやオレンジスイートのようにリラックスを促す香りを使い分けることで、生活リズムにメリハリをつけやすくなります。
ディフューザーやハンカチ、入浴など、自分のライフスタイルに合った方法で無理なく取り入れることで、継続しやすい点もアロマの大きな魅力です。
一方で、精油の希釈や香りの強さ、体調への配慮といった基本的な注意点を守ることも欠かせません。正しい使い方を意識しながら、自分に合った香りを見つけ、日常のセルフケアとしてアロマを上手に活用していきましょう。
