アロマ(精油)は植物から抽出した天然の素材で、香りを楽しんだりリラックスしたりするときに活用できるものです。近年では、癒し目的に個人で使用するほか、企業が取り入れるケースも増えています。
アロマを使った自然療法であるアロマテラピーが心身によい影響を与えることは知っているものの、具体的にどのように作用するかを知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、アロマテラピーが自律神経に効果的な理由からおすすめのアロマテラピーのやり方、おこなう際の注意点について紹介します。
そもそも自律神経とは?
自律神経とは、呼吸数や血圧などの体内の働きを調整している神経のことを指します。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあり、お互いに拮抗して働きます。交感神経が優位になるときは脳が活発に動いているときです。対して、体がリラックスしているときに優位に働いているのが副交感神経です。
なお、自律神経は体の次のような機能をコントロールしています。
- 血圧・脈拍
- 消化吸収
- 代謝
- 体温
健康的に過ごすためには、1日のうちで交感神経と副交感神経がバランスよく機能することが重要です。過度なストレスがかかる環境下では自律神経の働きが乱れてしまい、呼吸数や脈拍数、消化器官といった部分に支障が出ます。
自律神経が乱れることによって生じる体調不良を自律神経失調症といい、現代社会において多くの方が悩む健康問題の一つとなっています。自律神経失調症になると頭痛やめまい、動悸や倦怠感、不眠などが症状として出てくることが一般的です。
アロマテラピーが自律神経を整えることに効果的な理由
アロマテラピーが自律神経を整えることに効果的な理由は、アロマが交感神経と副交感神経のバランスを整える働きがあるためです。この記事を読んでいる方のなかにも、アロマを嗅ぐことで、気持ちが安らいだり集中力が高まったりした経験を持つ方はいるのではないでしょうか。
アロマは、記憶や感情を司る大脳辺縁系に直接働きかけます。香りが作用することで大脳辺縁系の働きが活性化し、交感神経と副交感神経のバランスがとりやすくなります。
日本看護研究学会雑誌の「香りが自律神経系に及ぼす影響」によると、ラベンダー系の香りは副交感神経を優位にしてリラックス効果をもたらし、ローズマリー系の香りは交感神経を刺激する働きがあるという結果が出ています。(出典:日本看護研究学会雑誌「香りが自律神経系に及ぼす影響」)
自律神経を整えるときに使うアロマを選ぶポイント|おすすめの香り5選
自律神経を整えるには、100%天然のエッセンシャルオイルを選ぶことが大切です。理由は自然由来のエッセンシャルオイルに、薬理効果があるためです。詳しくは「天然成分ならではのストレス軽減作用とは?効果とおすすめの精油ご紹介」で解説していますが、エッセンシャルオイルはリラックス効果や心身の不調を整える働きも期待できます。
心身によい影響を与えられることから、近年では個人で嗜むほか、オフィスの空間を整える際に使われることも珍しくありません。
下表は、自律神経を整えるときにおすすめのアロマをまとめたものです。
交感神経が優位なとき
精油 | 特徴 |
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ラベンダー | シャープで清涼感のある香りが特徴です。鎮痛作用や抗うつなどが期待できます。 |
ベルガモット | ほろ苦さのなかにみずみずしい香りを有していることが特徴です。消化促進や腸内調整などの体内を整える効果を期待できます。 |
副交感神経が優位なとき
精油 | 特徴 |
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ローズマリー | 爽快感のあるフレッシュな香りが特徴です。ハーブ調の香りで精神を高揚させる働きがあります。 |
レモン | 身近にある果物の一つで爽やかな柑橘系の香りが特徴です。集中力の低下を防いだり、リフレッシュ効果を期待できたりします。 |
交感神経と副交感神経のどちらにも作用させたいとき
精油 | 特徴 |
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ゼラニウム | バラを彷彿させる華やかな香りが特徴です。気分高揚作用やストレス緩和など、交感神経と副交感神経のどちらにも作用します。 |
自律神経を整える際に効果的なアロマテラピーのやり方
アロマを活用する際は、ただ香りを嗅ぐだけではなく、効果的なアロマテラピーを取り入れることがおすすめです。下記は、自律神経を整える際に有効なアロマテラピーのやり方の一例です。
- 芳香浴法
- 湿布法
- 蒸気吸入法
- トリートメント法
以下では、それぞれのやり方について詳しく解説します。
芳香浴法
芳香浴法は、香りを空間に拡散させて楽しむ方法で、身近にあるものを使って簡単に始められます。
最も簡単な方法は、ティッシュやハンカチにアロマを数滴垂らして香りを楽しむやり方で、オフィスで一息つきたい時にも、アロマテラピーを気軽に取り入れられます。
ディフューザーを使用する場合は、風通しがよい場所や風上など空気が流れやすい場所に設置すると、きれいに香りが広がります。ディフューザーの置き方について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
湿布法
湿布法とは、水もしくはお湯にアロマを数滴垂らしてからタオルを漬けてよく絞り、そのタオルを体の一部に当てて行うアロマテラピーです。
香りによって自律神経を整えるだけでなく、患部に当てることで疲れを緩和することもできます。例えば、肩周りや目元の疲れなどの場合は、温めたタオルで湿布法をすると血流を促す効果もあり、心地よい気分になれます。
打撲や捻挫など患部を冷やしたほうがよい時は、湿布法を冷やしたタオルで行うことをおすすめします。
蒸気吸入法
蒸気吸入法は、洗面器にお湯を入れてアロマを数滴入れてから蒸気を吸って香りを楽しむアロマテラピーです。お湯と精油があればできるため、忙しい朝や帰宅後の疲れたときでも簡単に取り入れられます。
温まった蒸気を体内に取り入れられるため、自律神経を整えるほか、喉のケアにも役立ちます。
トリートメント法
トリートメント法は、アロマと植物油を混ぜたものを使って体に塗布して行うアロマテラピーです。一緒にマッサージをおこなえば、香りによるリラクゼーション効果とあわせて、筋肉の緊張をほぐし、リンパの流れをサポートします。
精油を植物油で希釈する際の使用量の目安は、30mlの植物油に対し、顔に塗布する場合は精油を3滴程度(0.5%濃度)、体に塗る場合は6滴程度(1%程度)にしましょう。
アロマの濃度が高くなると刺激が強くなり、体内に吸収された成分が健康に悪影響を及ぼす恐れもあります。希釈の濃度を守って使いましょう。
アロマテラピーを行う際の注意点
アロマテラピーを行う際には、下記の点に注意しましょう。
- 精油の原液を肌に直接つけない
- 妊娠中はアロマを使うことを控える
- 必要に応じて医療機関へ相談する
アロマは植物から抽出されたもので、成分が凝縮されているため、効能も強くなっています。そのため、肌に直接塗ると刺激が強く、体に悪影響を及ぼす恐れもあるため、必ず希釈して使用しましょう。
アロマは体調に影響を与える可能性があるため、妊娠中はアロマテラピーを控えることがおすすめです。どうしても使用する場合は、芳香浴法で軽く楽しむ程度に留めましょう。
自律神経を整えるためにアロマテラピーを活用すること自体は問題ありません。しかし、自律神経失調症が疑われる場合は、アロマテラピーのみに頼らず、一度、医療機関へ相談することをおすすめします。
経営者も注目のアロマをオフィスに生かす取り組み
最後に、オフィスにアロマを取り入れる取り組みをご紹介します。
精油を用いたオフィスにおけるQOL向上の実例
下記は、ウェルネスコンサルティング株式会社が、当社のお客様に、オフィスにアロマ空間デザインを導入した感想をご回答いただいたアンケートです。
以下、自由感想
- 入室時に気分がいい
- 切り替えのスイッチが入る
- 謙虚な気持ちになる
- お客様へのおもてなしの心を強く意識するようになった。
- 印象が変わった。オフィスのグレード感の演出にもつながっていると思う。
- 気分転換になり、フレッシュな気持ちで仕事へ取り組めます
- 加齢臭がしなくなって帰ってきたときに気分が良い。
- 本社に行くと、毎回深呼吸しています。気持ちが良い意味でリセットされる感覚です。
アロマは『来客向けのおもてなし空間』としてだけでなく、社員の皆様のモチベーション向上やオフィスの快適さにも大きく貢献していることがわかりました。
上記は、2014年9月21日の早稲田大学における「現代QOL学会 第2回学術大会」での当社の講演においても、「アロマによる空間価値向上の実例~精油を用いたオフィスにおけるQOL向上の実例~」として、紹介させていただきました。
オフィスは人生の大半を過ごす場所です。そこにアロマを取り入れることで、社員のモチベーションが高まり、オフィスのQOLが向上し、生産性アップにもつながります。尚、オフィスにアロマ空間デザインを取り入れる際のポイントについては下記の記事をご参照ください。
まとめ
アロマ(精油)には、交感神経と副交感神経のバランスを整える働きがあり、アロマテラピーを日常生活に取り入れることで、自律神経のバランスを保つことができます。
アロマテラピーを簡単に取り入れるには、芳香浴法や湿布法、蒸気吸入法などから始めるとよいでしょう。これらの方法は、家にあるものだけで取り組めるため、朝の忙しい時間や帰宅後でも気軽にアロマテラピーを楽しめます。
また、オフィスにアロマ空間デザインを取り入れると、オフィス環境の改善につながります。社員の皆様の「心の健康」、ひいてはモチベーション向上やオフィスの快適さにも大きく貢献します。
毎日長い時間を過ごすオフィス空間だからこそ、社員のモチベーションアップ、快適さアップが実現できる香り空間を是非オフィスにも取り入れてみましょう。